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14話 クラスメートの転移

時系列は天野さんと松下くんが転移する日で、2人よりも先に転移しています。


『長谷川浩一』は天野さんに告白して振られた挙げ句に、天野さんと松下くんが遊園地で一緒にいるのを目撃した長谷川くんの本名です。

俺の名前は長谷川浩一。


昨日、遊園地で天野さんと松下が一緒にいるのを見てしまった上に、天野さんにはばっさり言われてしまった男だ…


あの天野さんのことだから学校にいけば必ず会うことになるわけだけれども、今日は成績がかかっている試験の日…


内申点のためにも休むことは出来ない…


鬱な気持ちを耐えながら家を出る。


電車の人混みに揉まれ、高いバスの運賃を払い、学校まで歩く。


告白したのを振られた時は、これからまだ近づけるチャンスがあると思えた分、幾分か気持ちは軽くなったが、今回ばかりはもう無理なのだと。


そんなことを思っていたら、教室の前まで着いた。


俺は、鬱な気持ちをぐっと抑え教室の扉を開ける。


「あ、来たか。昨日は誘ったばっかりに…なんだその… すまねぇな。」


「それは… 俺がへこんでいたから誘ってくれたんだろ? あれは偶然だ。気にすることじゃないさ。」


謝る林に気にしないように言う。


実際、昨日のは偶然だったし、天野さん達を見つけてしまうまでは楽しめていた。


「さて、一時間目はなんだったっけ?」


俺は授業の準備を始めた。


その後一時間目が終わって、今は休み時間になっていたが、天野さんと松下がまだ登校していない。


おかしい。


松下はともかく、あの真面目な天野さんが来ないのはありえない。


まさか2人でイチャイチャしてるとか… はないか。


そんな2人じゃない。


なら何だ?


俺は気がかりで仕方がなかった。


考え込んでいるとダチの林 尚生(はやし なおき)森 陽太郎(もり ようたろう)が寄ってきた。


2人はクラスメートから『森林コンビ』と言われるほどに仲がよい。


俺たちがよく一緒にいるのは、俺が林と仲良くなって、それから森とも仲良くなった形だ。


そんは2人と話をしていると突然、教室内がまばゆい光で満たされる。


「うわっ! なんだ!?」


「なによこれ!? 眩しい。」


そんなクラスメートの声が聞こえる。


光が収まったと思うと、そこは教室ではなく白で整えられた部屋だった。


「は?」


すっとんきょうな声が出てしまった。


他のクラスメートもへたりこんでいたり、混乱しているようだった。


まぁ… 1部、謎に興奮している奴もいたが…


カッ、カッ、カッと誰かが廊下を歩く音が聞こえてくる。


部屋の大きなドアが開けられ、そこから出てきたのは首からメダルを下げ修道女の用な服を着た、白髪が混じった黒髪の5,60代の女性と、同じ様な格好をした4人の若い女性だった。


「おぉ。着なさったか! 神に導かれし異界の若者達よ!」


興奮した様子で白髪の女性は言った。


それを聞いた1部の連中が声をあげる。


「これって異世界転移とかいうやつでしょ? そうでしょ。そうに違いない。ですよね?」


めっちゃ早口…


まぁ、ここがどこかは確かに大切だと思うが…


「そうじゃ! ご説明せねば! ニノマエ、イチジク、ツナシ、ホヅミ! 説明して回ってあげなさい。」


「「はい、シスター」」


シスターと呼ばれた女性の側にいた女性4人がクラスメートに順に説明して回る。


彼女らの説明によると、ここは異世界らしい。


そして、魔物と呼ばれる魔法を使える動植物がいること。


魔物が進化し、知恵を得たたことで生まれる魔人、さらにその頂点には魔王と呼ばれている存在がいること。


 元々は棲み分けされており、魔人との衝突は少なったらしいが、最近になって魔人との衝突がふえてきたこと。


 それに対抗する戦力として、コロリヴスタ王国が俺たちを召喚したこと。


 簡単にまとめるとこういうことだった。


 それを聞いたクラスメート達は


 『元の世界に帰れるのか』『戦力と言われても戦い方を知らない』『あうぅぅぅ...』


 と口々に言っている。


 冷静なのはここに来て興奮していた連中で、ほかは混乱していたり、泣き崩れていたりした。


 「皆様、落ち着いてください。まず、あまたある世界の中で皆様の世界がわからない以上、元の世界への帰還は出来ません... 無理に召喚してしまったこと、お詫びいたします。ですが、守るための力が必要なのです。戦い方ももちろんお教えさせていただきますゆえ、私たちを守っていただけないでしょうか?」


 クラスメート達は黙る。


 「...逆に、わかれば帰ることはできるんですよね?」


 俺の質問を聞いたクラスメート達とシスターはハッとした顔をした。


 「それはそうですが... 知る手段がないかと思います...」


 シスターは答える。


 俺は考えた。


 『これを理由にして、クラスをまとめようと』


 ここは異世界で右も左も分からない。


 そんな中でバラバラになってはいけない。


 「みんな! 聞いたか? 僅かでも帰る手段があるなら、それを掴むためにも頑張ろうぜ!」


 わずかな沈黙の後に林が口を開いた。


 「...そうだな。そうだよな。」


 それに釣られて皆も声を上げ始める。


 「...ここまでされて何もしないのは、嫌だよ。やってみるよ。」


 「生きて帰る。そのためにも...」


 「絶望しても何も変わらない。なら変えるれるように進むわ。」


 その声々を聞いて、俺はなんとかなったと少しばかり安心するのだった。





ニノマエ、イチジク、ツナシ、ホヅミはそれぞれ漢字の『一』『九』『十』『八月一日』のかわった読み方です。

コロリヴスタは『王国』をある言語に翻訳したものをもじりました。

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