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10話 天野さんと僕の転移の日

お久しぶりです。2章開幕です。


ついに転移の日が来てしまった。


天野さんに告白してからの日々は短かくも、今までとは比べ物にならないほどに濃密なものだった。


勉強会をしたり、筋トレ漬けの日々を過ごし、

そして昨日には一緒にUSJ(universal stadium Japan)で至福の時を過ごした。


・・・風呂での事件は不可抗力だと思う。


そんなことを思いながら、僕はその時を待っていた。


「天野さん、今日でこの世界とはお別れなんだよね…」


「そうよ」


天野さんは短く返事した。


今朝から準備をしているからなのか慌ただしく何かを設置していた。


暫くして、家をぐるっと囲むように何かを設置し終えた天野さんが僕に話しかけてきた。


「松下くん、準備が出来たわよ。何か1つ持っていきたいものを選んだら私に教えてちょうだい」


天野さんはそう言ってきたけど僕の答えは


「天野さんを持っていきたいです。一緒に来てくれるなら他のものは何もいらないよ」


「……っ!? へ、変なこと言わないの! 私が松下くんに付いていくのは、ま、前から決まっていたことだから他のものを言ってちょうだい」


天野さんは赤くなりながら答えた。


あの完璧な天野さんが噛みながら、だ。


このギャップがかわいい。


「それなら、家を。家を持っていきたいです。1つですもんね」


「家! なんでまた! 1つとは言ったけど・・・」


「それは、家族との思い出の場所だし、天野さんとの思い出の場所でもあって、異世界でも拠点にも出来るしで良いことだらけでしょ。」


「それは…そうかもだけど… さすがに、転移直後は、目立つ上に家を置けるような土地もないし、水道も電気もガスも使えないけど、それでもいいなら良いわよ…」


「大丈夫です。家でお願いいします」


「…わかったわ。それならもう少し準備する必要あるから待ってちょうだい」


天野さんはそういって、また何かを設置しにいった。


天野さんのその様はどこか『仕方ないわね。でも良いわよ』といった感じがした。


準備を終えたらしい天野さんが戻ってきた。


「さぁ、ヴァルナヘルムに向かうわよ。準備は良いわね?」


「はい。天野さん」


「よろしい! 痛いから、覚悟してね」


天野さんがそういったかと思うと、胸元に激しい熱が走った。


そして僕の視界に写ったのは『右腕を肘まで僕の体に突き刺し、その腕を赤く染めた天野さん』だった。


え? なん…で?


そこで僕の意識は闇に飲まれていった。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




ふにっ、ふにっ


「んっ、ん~」


柔らかな感覚に包まれながら、僕は意識を戻した。


その柔らかさにもっと包まれていたいと思いぐずぐずしていると、頬に痛みが走った。


「こ~ら~、いつまで私の膝枕に寝てるのよ! 意識が戻っているのはわかっているんだからね!」


「いたい、いたい、いたい、天野さん、止めて下さい!」


僕は頬をつねられた痛みで目が覚め、その凛とした声から、その痛みをもたらしたのは天野さんだと言うことを理解した。


「さぁ、来たわよ。ここがヴァルナヘルムよ」


「ここが…」


天野さんにそう言われ周りを見渡すと、そこには『僕の家』と『地平線まで続く広大な草原』だった。


「家以外なにもないじゃん…」


「そりゃ、裏路地ならともかく、急に町中に人が現れるだけでも驚かれるのに家まで現れたら大騒ぎよ…」


天野さんの説明は確かに『それはそう』だった。


「でも、ここからどうするんですか? 魔物みたいな動物もいるんでしょ?」


「それは、私がいるからここら辺の弱いやつは寄ってこようともしないから大丈夫よ。そしてまずはここから一番近い街に向かうわよ」


「でも、この家をどうやって持ち運ぶんです?」


「逆に動かせないようにすると思う? そこで、まずは松下くんにある魔法を覚えて貰います」


─storage─


手を家に向けた天野さんが発音良く言うとそう言うと、家がスッと天野の手の先に吸い込まれた。


「コツはキレイにはっきり発音することよ。さぁ試してみて」


天野はしれっと家を再び取り出し、僕にやってみるように告げた。


僕は天野さんに言われるように唱えた。


─ストレージ─


辺りを静寂が包んだ。


「・・・発音がダメよ。日本語っぽい」


天野さんにそう言われて、もう一度唱えてみる。


─storage─


家が僕の手に吸い込まれた。


「成功した?!」


「へぇ~、二回目で成功するとはなかなかやるじゃない! でも、さすがに持ってきた家を収納魔法から取り出して使うなんてことは目立つ上に基礎がないし、暫くはテントでキャンプ生活だからね」


僕の始めての魔法は収納魔法となった。


そうして魔法を覚え、街へ向かっている最中に気になっていたことを聞いてみた。


「そういえば、天野さん。僕が気を失っていたのと転移って関係あったりします?」


「あ~ …それ聞いちゃう? 知りたい?」


天野さんは顔をそらしながら、確認してきた。


「気になったので。一応聞いておこうかなと…」


「まぁ良いけど… まず、私は松下くんを1度殺して魂と体に分けたのよ。転移させれるのはモノだけだからね。魂は私の中に一旦取り込んでこっちの世界に持ってきてたの。そしてこっちに来てから体に魂を再び合わせて蘇生させたのよ。」


「…あれって死んでたのか」


「まぁそういうことになるわね」


まさか異世界に来るのに1度死ぬとは思ってもいなかったが、貴重な経験となったのは間違いない。


「…ねぇ、天野さん。これからも僕が死んでも助けてくれる?」


「…バカね。私の目の届く範囲内とも言わずにどこにいても助けてあげるわよ」


そんなやりとりをしながら僕と天野さんは街に向かって進んでいった。


奇しくもその日は、僕が天野さんに告白した日と同じような綺麗な青空であった。




転移の方法はどうしようかと考えましたが、膝枕の展開を作りたくなったのでこの案にしました。


もっとファンタジー要素が欲しい! もっと甘い展開が欲しい! 等の感想があれば是非お願いします!

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