そんな事言われたら止められない
俺の言葉に、秋帆君が俺を抱き寄せた。
「そんなん、言われたらとまらんなる。」
「僕もだ。」
心春君も抱き締めてきた。
「どうしたらいいん?俺は、よくわからへん。女の子しか付き合った事ないから」
俺の言葉に、二人が離れた。
「そんなん、いちいち聞く?」
「ごめん。」
「謝らないの。」そう言って心春君が、俺の手を繋いできた。
「心春、駄目やって」
「嫌だよ。だって、受け止めようとしてくれてるんだよ。」
「だから、俺等の感情に巻き込んだらアカンのやって」
そう言って、秋帆君は俺と心春君を離そうとする。
「ちょっとだけ、おかんにかけていい?」
「ああ、ええよ。」
俺は、二人から離れておかんに電話した。
「もしもし、やっぱりあかんかったか?お母ちゃん、今みんなといるけど、迎えにいこか?」
「ええわ。俺、今友達とおるから。もしかしたら、泊まりなるかもしれんからって思って」
「ホンマか!ヒーローにおうたんやな。わかった。また、なんかあったらかけや。お母ちゃん、いつでもでるからな」
「わかった。バイバイ」
「はい。バイバイ」
おかんと電話を切って戻ってきた。
秋帆君が、心春君を説得してる。
「俺等の世界に連れてきたらアカンのや、何でわからんの」
「いいじゃん。最初は、そうでも変わっていく人もいるんだよ。」
「美月君は、女の人と一緒になって結婚して子供を育てる。そんな幸せを手に入れて欲しいんや。だから、アカンって話したやろ?何回も」
「わかってるよ。だけど、一緒にいたらとめられないよ。」
「だから、もう帰るんや。わかったか?」
「わかってるよ。」
俺が戻ってきたのに気づいてないようだった。
「あの」
「ああ、電話終わったんか?」
「じゃあ、帰るね。」
「あの、今の話聞いてたんやけど。何で、俺の事無視して二人で決めてしまうん?」
その言葉に二人は、驚いた顔をしてる。
「俺は、二人とおりたいんやで!今は、それ以外考えられへん」
堂々と言っている自分に驚く。
「そんなん一緒におったら欲しくなってくやん。もっと、先に先に進みたくなるやん。」
「そうだよ。そしたら、気持ち悪くなるよ。」
そう言って、二人は下を向いてる。
「そんなんやってみなわからんやん。俺が、気持ち悪なるかやってみなわからんやん。」
「やってみたいんか?」
「今日一日過ごしてみる?」
俺は、その言葉に頷いた。
「じゃあ、行こうか」
心春君が、俺の手を繋いだ。
三人で、桜並木を歩く。
「腹減らへん?同窓会で食いそびれてしもたから」
秋帆君が、笑った。
「じゃあ、ご飯食べようよ」
「そうやね。食べよ」
そう言うと二人は、俺を連れていく。
スーパーで、買い物をする。
「なんで、スーパー?」
「後で、わかるよ。」
そう言いながら、お肉をカゴにいれている。
「ワイン、飲めるんか?」
「うん」
そう言うと秋帆君は、ワインをいれた。
心春君は、どんどんお肉をいれていく。
「焼き肉のタレと、サンチュでしょ。椎茸とエリンギ」
そう言いながら、カゴにいれていく。
カゴは、いっぱいになった。
「もう、買いすぎ」
秋帆君に言われて、いれるのをやめた。
レジでお会計をする。
「38500円です。」
すごい額、秋帆君がカードで払った。
「あの、お金だすよ」
「ええよ、ええよ。気にせんで」
心春君は、袋に詰めていく。
「二人は、何してるん?」
「今は、無職」
「えっ?やったら、なおさら」
「いらないよ。無職でもお金はうみだしてるから」
そう言って、心春君が笑う。
あっという間に、袋に詰めたけど袋は三つ分にもなった。
「重いのは、秋帆が持ってね」
「はいよ。」
そう言って、秋帆君が荷物を持つ。
一人一つずつ袋を下げて、歩き出した。
「フンフフフ」
優しい鼻歌を、心春君が歌ってる。
黙って、歩いた。
しばらくすると、心春君が止まった。
鍵を開けてはいる。