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現れた人

気分悪(きぶんわる)くないなら、よかったわ」


そう言って、トイレから出た灰原を殴り付けた。


ドサッ、灰原は床に尻餅をついた。


「なんやねん、お前」


そう言われてサングラスを外した。


あっ、ああー。俺は、その顔覚えてる。


「今度へんな真似したら、確実に殺るで。あの頃と違って俺も大人になったんや」そう言って灰原の胸ぐらを掴んで引きずりあげた。


「なんの話や」


「まぁまぁ、今日は同窓会やから。おおめにみといたるわ」


そう言って灰原のスーツを直してる。


「お前の事、忘れへんからな。邪魔しやがって」


灰原は、トイレの壁を殴って去っていった。


俺は、半分しかズボンをあげれていなかった。


近づいてきた。


ヤバい、今度こそ軽蔑されるって思った。


「一人であげられへんのか?」


彼は、トイレにはいってきて膝までしか引き上げてない俺のズボンをあげる。


ヤバい癖、キモいってあいつらみたいに言うんだろ?


泣きそうなのをこらえてた。


「ごめんな。遅なってしもて」


そう言うと俺を優しく抱き締めた。


我慢してた涙が流れた。


「俺は、お前を必ず守るって約束したのにな」


そう言って背中を擦ってくれる。


「キモくないん?」


ずっと、聞きたかった。


そう言った俺から、彼は離れた。


「そこが、そんな風になったからか?」


って、聞いてくる。俺は、頷いた。


「せーへんよ。そんなん自然現象やん」


そう言ってポケットからハンカチを取り出した。


「これ、痛いやろ?俺のせいであいつが、噛ったな」


そう言って唇の血を拭ってくれる。


「遅くなった、秋帆、ぐちゅぐちゅするの買ってきたよ。」


「心春、ありがとう。絆創膏ないか?」


「うん。あるよ」


「心春、よう怪我するからある思たわ。」


そう言って、俺をトイレから出した。


「ぐちゅぐちゅしとき。気持ち悪いやろ」そう言って渡してくれた。


俺は、口の中をゆすいだ。


「こっち向いて」


そう言われて、向くと俺の唇に優しく絆創膏を貼ってくれた。


「ありがとう」


そう言った。


「ちょっと、外の椅子で休んでからもどろう。」


イントネーションが、標準語になっている心春君が言った。


「うん。」


俺が、頷くと秋帆君が俺を連れていってくれた。


中学生の頃の俺を支えてくれたヒーローに会えたんだ。


「なんで、きたん?」


秋帆君に言われて顔をあげた。


「人生をかえたかった。性に対する嫌悪感がずっと拭えんかった。だから、俺は彼女も結婚も諦めた。それだけやない、あの日から人の目が怖いんや」


手が震えてる。


心春君が、手を握ってくれた。


「僕達の事も、怖いの?」


優しい声と優しい話し方をする。


俺は、首を横にふった。


「それなら、よかった。」


柔らかい笑顔で笑う。


「嫌悪感が拭えんのは、自分の体が反応するからか?」


秋帆君は、心春君と違って男らしい声と男らしい話し方をする。


「そうかもしれへん。中学の時、見られたやつに、ヤバい癖や言われた。」


初めて、誰かに話した。


「そんなしょうもない事気にしてどうするん?俺なんか、昔、心春にキスされただけで下半身がヤバかったで。ハハハ」


そう秋帆君が笑ったら、心春君が、「秋帆は、僕を軽蔑しなかったよ。僕は、女子人気No.1って言われていたけど…。本当は、男の子が好き。さっきの話だと、美月君は僕を軽蔑するよね。今、こうやって僕に手を握られてるのも気持ち悪いよね。」そう言って心春君が、俺から手を離そうとするのを反射的に握ってしまった。


「軽蔑なんかせーへんよ。心春君は、俺のヒーローやのに」って笑って言った。


「ハハハ、よかったな。心春」


秋帆君が、笑ってる。


「二人は、そういう関係なん?」


「ちゃうちゃう。好きなやつが同じだけや」


「好きなって、秋帆君もそうなんやね。」


「俺が、それに気づいたんわ。高校二年時。心春は、自分責めとったわ」


「だって、僕が中学三年の夏にキスしちゃったから」


「最初から、そうやったんやろ?気づいてなかっただけで」そう言って、秋帆君が立ち上がった。


「そろそろ、同窓会いこか」


そう言って、歩き出す。


心春君は、俺の手を握りしめていた。




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