同窓会
「みっくん、どこやった?」
俺は、ハガキを見せる。
駅から降りて、おかんは会場に俺を連れてきた。
「お花見言うて、この会場から花見に行くだけやろか?」
桜の道を通り抜けながら歩く。
「しらん。」
「あったわ、ここや。」
おかんが、指差した。
「みっくん、一人でいける?」
「ガキやないで、35や」
「そうか、ほなお母ちゃんそこで少しだけ待っとくから…アカンかったら電話やで!わかった?」
「わかった」
俺は、おかんからハガキをとった。
受付がいて、名前は何ですか?と聞いてきた。
「流川美月です。」
「流川さんですね、こちらにご記入どうぞ。」
受付の女が、怪訝そうな顔を一瞬したのを見逃さなかった。
俺は、名前を記入した。
「これ、どうぞ」
流川と記入されている。名札を渡された。
会場にはいると、たくさんの同級生が来ていた。
「あれって流川やん」「やば、ようこれたよな」「ホモやろ?」「まだ、結婚とかもしてへんよな」「童貞やけど尻は卒業したらしいで」「ヤバ、病気あるんちゃう?」「きもいな、あいつ」みんなが、コチョコチョ話してるのが聞こえて、その場に居たくなかった。
やっぱ、おかんに電話……
そう思った俺の前に、「なつかしいな。また、会えるなんて嬉しいわ」俺の顎を掴んできた。
ニタニタ笑う5人組。
「やめろ」
俺は、顎に置かれた手を掴んだ。
「元気しとった?ゲイになったって聞いたけど」ゲラゲラ笑われている。
「なってないわ」
俺は、心臓がちぎれそうな程いたかった。
「残念やな。俺は、あの日々からどっちもいけるんやで」
耳元で灰原が、囁いた。
この声、気持ち悪い。
吐き気がする。
俺は、トイレに駆け出していた。
「最悪や」
泣きそうな顔を必死で押さえた。
「なんで、逃げるん?」
はいってきたのは、灰原だった。
「なんの用や」
俺が、トイレから出ていこうとした腕を掴んで、個室トイレの中に引っ張った。
ガチャ…
便器の上に座らされた。
立ち上がろうとする肩を押さえつけられた。
「懐かしいな。興奮するやろ?」
「まったく、せーへん」
そう言った俺の胸ぐらを掴んで立たせた。
狭いトイレで、壁に押しつけられる。
「あれから、いろんなやつとやったけどな。美月のこの顔が忘れられへんかったんやで」
俺の顔を掴んだ。
「この目、興奮するわ」
灰原は、ニタニタ嬉しそうに笑ってる。
気持ち悪い、吐きそうだ。
一発殴るつもりが、女みたいに震えてる。
「欲しかったやろ?俺の事」
首を横にふるのが、精一杯だった。
「嘘つけ。俺は、こんなに美月が欲しかったんやで。大人になったから、あの時よりうまくなったんやで。試してみる?」
俺は、さらに首をふった。
灰原は、俺のズボンの上から指を這わす。
「やめて…くれ」
頑張って、出せた言葉がそれだけだ。
「やめへんよ。ずっと、待ってたんやから」
そう言って、俺の唇にキスをしてきた。
あの頃と違ってこいつは、確実に俺をやるし
俺を助けてくれるヒーローは、どこにもいない。
軽いキスは、通り越した。
酷いよ。涙がでる。
舌を噛みきってやりたい。
下半身を這う手を切り落としてやりたい。
ズボンのベルトをはずされて、ズボンが下ろされた。
パンツだけになった。
「やっぱり、ちゃんと俺を受け入れてるんやないの」
灰原は、笑ってまたキスをしてきた。
そして、パンツの中に手を入れられそうになった瞬間
コンコン コンコン
「気分悪いんですか?」
ゴンゴン ゴンゴン
「救急車呼びましょか?」
その声に苛立ち、俺から離れた。
唇を離す時に、ギリっと強く唇を噛まれた。
ガチャ…
「気分なんて悪ないけど」
唇から、血が出てきた。
俺は、急いでズボンをあげた。
恥ずかしい、見られてしまった。
軽蔑される。
あの日、森野達が見ていった。
「あいつ、感じてんの?」
「きもっ、男にキスされてヤバい癖だな」
涙でてきた。
灰原が、個室トイレから出て行った。