二人と飲み明かす
途中で、スーパーに寄ってもらってこっちゃんの大好物をたくさん買って家に帰った。
俺は、すごく気分がよかった。
家に帰って、ショートケーキとイチゴに練乳たくさんかけて、ココアを供えた。
「ハンバーグ、湯煎するわ」
俺は、キッチンでハンバーグを湯煎した。
「丸い丸い目玉焼き、食べれば笑顔が溢れ出す」
俺は、歌いながら目玉焼きを丸く焼いた。
「その歌なんなん?」
秋帆に言われた。
「こっちゃんが、歌ってた歌。」
「何か、可愛い歌やな。」
「ありがとう」
「うん、こっちゃんって呼んでもうてるけどいいんかな?」
「二人には、呼ばれてもかまへんよ」
俺は、湯煎したハンバーグを皿にいれて目玉焼きを乗せた。
「おかんのハンバーグには、負けるけどな。こっちゃん」
そう言って仏壇に供えた。
「チーカマとビールもやろ?」
「うん。」
俺等、三人は手合わせた。
ダイニングに三人で座る。
「今日は、泊まってってよ」
「ええの?」
「うん」
俺は、笑った。
みんなチーカマ食べてる。
「俺とこっちゃんな、普通の双子やないと思うねん。」
「何で、そう思うの?」
「俺、こっちゃんにあいつ等にキスされてんの見られたから。こっちゃんは、そん時から俺と一生一緒にいるって決めたんやと思う。だから、あいつの時に俺の名前呼んだんかなって。あいつが話してる時に気分が悪なったんわ。あいつ等に俺がされてた事を、こっちゃんがあいつにされてたから…。あの瞬間、俺もあいつ等の目が浮かんできた。」
俺は、ビール持つ手が、ガタガタと震え出した。
「気持ち悪くて堪らんかった。こっちゃんも、一緒やったんやと思う。俺は、灰原に口で」
「言うな」
秋帆が、俺に言った。
俺は、その言葉に泣いた。
「ちゃんと話してなかったやん。最後の話。」
「言わんでええねん。自分の傷をまたえぐり出して見せんでええねん。」
秋帆と心春は、何も言わなくてもわかってるって顔をしていた。
「話聞いたら、気分悪なった。まだ、中学にも上がってないこっちゃんは、どれだけ辛かったんやろうかって考えれば考える程、胸が押し潰されそうやってん。」
「そうやね。」
「おかんには、内緒にしてくれへん?今日の話」
「言うわけないやん。何で話すん?」
「ごめんな、ありがとう。もうおかんをこっちゃんの事で苦しめたくないねん。」
俺は、ビールをグビグビ飲んだ。
「奥さんと子供見た時、幸せな奴なんだと思ったのにね。ただの寂しい奴やったね。灰原も佐々木も…。」
「俺もそう思った。灰原は、美月の愛を欲しがって、佐々木はこっちゃんの愛を欲しがった。二人とも、力ずくで愛をもらおうとしたんやな。どっちも、中身スカスカやったんやな」
そう言って、秋帆が笑ってる。
「俺、やっと少し自由になれたんや。ありがとう」
俺は、二人に頭を下げた。
「俺等は、何もしてないで!美月が、自分がやりたいようにやったんやろ?」
「うん。全部美月が決めた事だよ。」
「俺、佐々木を憎んでたはずやのに…。おうた瞬間、小さくて哀れな奴やなって思ったんや。こんな奴、やる価値もないなって思ってん。」
「うん」
「だから、心春が殺らんって言った時、胸がスッーとした。秋帆が、中身スカスカやなって言った時、スカッとした。だって、俺あんな死人みたいなやつに囚われて生きてたんやで。ずっと…。」
「そうだね。」
「あんなん生きてるって言わへんって思った。佐々木は、こっちゃんを失った日に自分も失ったんや。」
「もう、佐々木はあのままやで一生。」
「灰原も同じだよ。同じ目をしてた。美月を失った日に自分を殺したんだと思う。」
小春の言葉に、俺は少し驚いた顔をした。
「もう、ええやん。美月が幸せになれるなら。俺は、それでいい。」
そう言って秋帆はビールを飲んでる。
それから、二人と何でもない話をして一日が終わった。




