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53話 きっと

これを機に、俺たちの関係は回復していった。勿論、前のようにとはいかないが徐々に徐々に。


根も葉もない噂が流れなければこんなことにはならなかっただろう。


しかし、そんなことを言っていてもしょうがない。


あれから数日がたったがあいつはやはり昔の馬場のままだ。俺にはこの感覚が嬉しかった。


なんて考え事をしていると、月城がお風呂から出てくる。


「練習はどうだ? 月城」


とうとう残り数日と、迫ってきたライブの日。


月城は疲れているようで、帰ってきたら速攻で風呂。最近は毎日、俺が料理を振る舞うようになっていた。


すると、お風呂から上がってきた月城が口を開く。


「ちょっと大変だけど、ゆーくんに見てもらう為だって考えたらこんなの余裕だよっ!♡」


そう言って月城は、料理の並べられたテーブルの椅子に腰掛けると、俺が作った料理を嬉しそうに見つめた。


「それに、最近は練習のご褒美にゆーくんの手料理を食べられるしっ♪」


月城はそう言ってニコッと笑う。と、俺もそれに続くように椅子に腰かける。


「喜んでくれたなら良かったよ」


「うん! 私、今が一番幸せ〜っ♡」


月城はそう言うと、あいさつを終え、ごはんに手を付けようとする俺をじーっと見つめた。


「勿論、ゆーくんもだよね?」


と、俺は思わず、勢いよく詰め込んだご飯が、喉に詰まりそうになり、コップの水を流し込む。


「も、勿論だ。月城と一緒にいられる今が一番幸せだな」


「うんうんっ! やっぱりゆーくんも、そう思ってくれてたんだ〜♡ 明日も練習がんばろっ!」


「ああ、頑張れよ」


俺がそう言うと、月城は俺に笑いかける。


「ゆーくんも頑張ってねっ♡」


「……ありがとな」


やはり普通にしてれば可愛いんだよな……。と、俺は心で呟いた。



♢ ♢ ♢



ベッドの上、私は考え事をしている。


とうとう後数日へと差し掛かった、MAGIC、月城のライブ。


当然チケットは入手済み。後は偶然を装い、唯斗と月城、その二人にあって決着を付けるだけだ。


しかし、最近の唯斗の様子と言えば、なぜか絶交していたはずの馬場とまた絡み出している。


「おはよ、唯斗」


「……おはよう」


「ってか。昨日、発売されたMAGICの写真集みたか? 月城月乃がちょー可愛くてさっ!」


「ま、まあ、みたというか、みさせられたというか」


今日の朝もこんな調子だ。私は悔しかった。着々と先を越されていく感覚。


唯斗がお人好しすぎる。それなら私だってまた関係を築けるはず。


そうだとしたらライブ当日が楽しみで仕方ない。


また唯斗と昔のようになれるかもしれない。私はもう噂に流されるようなことなんてない。


何があっても唯斗を信じたい。そうすればきっと唯斗もわかってくれるはずだ。


そして私は、部屋の明かりを消し、そっと眠りについた。

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