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35話 勉強②

「え? なんで? 私のことはどうでもいいの?」


「何を言う、そんな訳──」


俺は咄嗟に弁明を試みるが月城には届かない。最早、声色で伝わる恐怖から月城の顔を見ることすら出来ない。



「私のこと嫌いなの? ねえなんで?」



「嫌いとかじゃ……」



やはりだ。やはり、どこかで俺は月城の地雷を踏んでしまったらしい。



「自分のことだけなの? 私に教えてくれないの?」



「いや、だからテスト……」



俺はなんとかテストを訴えてみるが月城の目は死んだ魚のようになり、ただ一点、俺を見つめている。


俺がどれだけ言葉をオブラートに包もうが今の月城にはネガティブに捉えられてしまうこと間違いない。


もしここで下手な出方をしたら月城に何をされるかわかったもんじゃない。


そう、ここは冷静に言葉を選び対処すべきなのだ。


そして、俺が口を開こうとすると月城は俺の言葉に被せるように話し始めた。



「え? 私よりテストの方が大切なの? そうなの?」



「勿論そんなことは……」



「ゆーくん?? そんなわけないよね? うそだよね? 私の方がテストよりも大切だよね?」



「……」



「え? ゆーくんなんで黙ってるの? ほんとにテストの方が大切なの? ねえこたえてよ? ゆーくんこたえてよ??」



「も、勿論、勿論! 月城の方がテストより大切だ。大切に決まってるじゃないか」



俺がそう言うと月城はあからさまに目を輝かせ期待に満ちた表情で口を開いた。


「ええっ♡ ゆーくんっ♡ ってことは……?」


「──ッ分かった分かった。勉強は教える。だから少し離れろ」


俺は暴走する月城を宥めるように月城の頼みを了承する。


これ以上粘ってしまっては再びお仕置部屋へ連行されかねないからな。


それに、俺が了承を聞いた月城は心底嬉しそうにニコニコしている。


月城の機嫌も治ったみたいだしこのままそっとしておこう。


しかし、とは言っても月城に勉強を教えることについてデメリットばかりではない、寧ろ理解が深まるという点について言えばかえっていいこととも言えるだろう。


ポジティブにいこう、デメリットばかりでなくメリットを見つめよう。


「それで、何を教えればいいんだ?」


俺は早速テスト勉強に取り掛かろうと、月城に問いかける。……が、月城は俺の話など、どこか上の空でなにやら独り言をブツブツと言っている。


「ん〜っ! やっぱりテストより私の方が大切なんだねっ〜! ゆーくんのこと信じてた甲斐があったよぉ〜♡ 言わば私とゆーくんは一心同体だねっ!」


「月城、さっきから何言ってんだ」


「私とゆーくんとの愛が育まれているのを実感してたの!」


さて、一体何を根拠に俺たちが一心同体だと言っているのだろう、それに何故このタイミングで俺と月城の愛の育みを感じているんだ。


俺が了承したのはテスト勉強なだけであってそれ以上でもそれ以下でもない。


と、まあツッコミたい場所はいくつかあるが、こうなってしまった月城は、俺が何を言おうと大抵自分のいいように解釈するだろう。


今すべき最優先事項はテスト勉強だ。


「……どういうことかは知らないが。……そんなことより早く勉強に取り掛かるぞ」


俺がそういうと満面の笑みで月城は返事をし、俺の方に手を回し、俺の腕をぎゅっとつかんだ。


「はーい! ゆーくんも早く私と勉強したかったんだね〜っ!♡ ふふ、私もだよ〜っっ!!♡♡」


月城はそう言うと俺の腕を掴む力をギュッと強める。


「……そ、それじゃ、まずはここの問題から……」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 面倒ごとはさっさと片付けて月城とイチャツキたいとか上手い逃げ道はないもんかねぇ…… まぁ無理っぽいけど
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