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25話 冗談

ふわっと口の中に広がる玉ねぎと肉の絶妙なバランスの取れた風味、食感、香り、やはり月城の作る料理にハズレはないと再確認される。


「ゆーくんどぉ? おいしい?」


月城は生姜焼きを頬張る俺に、覗き込むように問いかける。料理に関して、月城の腕は確かなものだ。


「美味い。よく出来てるじゃないか」


俺がそう言うと、月城は心底安心しきったような表情を浮かべる。


「良かったー! ゆーくんの為に頑張った甲斐があったよ!」


俺の為か……。よく考えてみればこの料理にも細工がされているかもしれない。


現に、この前体液を入れるか迷っていた、なんて常人でない発言をしていたはずだ。


月城ならやりかねない。


と、俺は恐る恐る月城に問いかける。


「……因みに月城、一応聞いておくが、変な隠し味なんて入れてないよな?」


俺がそう言うと月城は首を傾げた。


「変な隠し味? 体液のこと?」


流石は月城、自分が隠し味に入れそうな目星は付いているようだ。……本当に入れてないといいのだが。


「まさか、体液を入れたのか?」


俺が口に入った生姜焼きを水で流し込みそう言うが、月城はキョトンとしたまま表情を変えない。


そして、月城はさも当然のように口を開いた。


「うん。入れたよ」


「っ?!?!」


俺は思わず口に放り込んだ水を吹き出しそうになり、慌てて戻す。


というか、こうなってくるとコレが本当に水なのかも危うくなってくる。


一体俺は何を食べるのが正解なのか分からなくなって来てしまった。


なんて考えていると、月城は可笑しそうに話し始めた。


「なーんてね、嘘だよ? もー、ゆーくんビックリしすぎ!」


俺に笑いかける月城。冗談は程々にして欲しいものだ。


それに月城が言うと冗談も冗談に聞こえない、本当に入れてないかも未だ危うい。


「じゃ、じゃあ本当に入れてないのか?」


俺が焦りを隠すように月城に問いかける。


どこまでが嘘でどこまでが真実なのか、月城の場合、到底見極めることが出来ない。


「うん。入れてないよ。私的には入れてもいいし、寧ろ入れたいくらいなんだけど」


月城はそう言うと、表情を変えずに続ける。


「ゆーくんに念をおされたから体液を入れるのは控えるようにしてたの。ゆーくんが入れて欲しいなら全然いいよ?」


どうやらこの件については流石に俺の意見が尊重されるらしい。


当然といえば当然のことだ、月城の裁量で決められては今後俺は一切食事をとる事が出来なくなってしまう。


「ああ。勿論入れないでくれ。せっかくの月城の料理が台無しになりかねないからな」


俺はどうにか月城を丸め込もうと慎重に言葉を選ぶ。


「うーん。でも、ゆーくんが入れて欲しくなったら、いつでも言ってね。入れてあげるから」


月城は不満そうな表情を浮かべ話しかける。


……しかし、月城には残念だが、そんな日は一生涯掛けてもない。


「……わ、分かった。時が来たら、な」


俺はボソッと呟いた。

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