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14話 接触

「──え」


月城は零れるようにそう言うと驚いたような、焦っているような顔をした。


「分かってくれたならそれでいい」


俺は月城がやっと自分の非を理解してくれたようで、ホッと胸を撫で下ろす。


しかし、この一件でお仕置きはまだ健在、且つお仕置き専用の部屋まで確保されていることが明らかになった。


今後は月城を刺激しないよう精進していかなければいけないし、ホッとしている場合ではないのかも知れないな……。


「それじゃあ、私の勘違いで……」


月城は驚いたような、焦ったような、顔をしている。冤罪の重みでも感じてくれたのだろうか。


……重みを感じたなら早い所ここから、俺を出して欲しいのだが。


「そんなことより早くここから出してくれ」


俺はため息混じりにそう言うが、当の月城はそんな言葉なんて、耳から耳へするりと抜け落ちてしまったかのような焦りを見せた。


「ゆーくん、ヤバいよ、どうしよう」


「今更何がヤバいんだ。こんな状況におかれた俺の方が何倍もヤバいだろ」


この状況を鑑みるにどう考えても俺の方がヤバいはずだ。


手足を拘束され薄暗い部屋に放り込まれているのだ。


「違うのヤバいの」


しかし、月城は持っていた俺の携帯を無慈悲に落とし、さらに焦りを募らせる。


やはり、コイツは。人の携帯のロックを勝手に解除し、メッセージの履歴を勝手に見た挙句、無慈悲に落とすなんていう愚行、月城でなければ俺もガツンと言ってやりたかった。


「……全く。何がそんなにヤバいんだ?」


俺は呆れたように吐き捨てる。


「ゆーくん、わ、私……」

「ゆーくんの幼馴染、呼び出しちゃったよ」


そう言うと月城は落とした俺の携帯を拾い上げた。


俺の幼馴染、芽衣を呼び出す? 一体なぜそんなことを?


「っ?! よ、呼び出した?!」


俺は思わず声を荒らげる。すると、月城はなにやら俺の携帯を操作しだし、ある画面を見せつける。


「ん」


月城が俺に見せつけたその携帯の画面には、やはり芽衣宛に呼び出しのメッセージが送り付けられていた。それも話がある、なんて言い草で。


あの出来事があった矢先、芽衣からしたらたまったもんではないはずだ。


「お、おまえ、何やってんだ!?」


流石の俺も、コレには月城を問いつめる。


「だ、だって……」


しかし、月城は口篭るままだ。


「……仕方ない。俺が行ってくるから早くほどけ」


俺は仕方なく芽衣との約束の場所へ行くことを決意する。呆気なく振られた俺が再び芽衣と話をする時が来るとは。


なんて言って帰ろうか、誤送した、なんて言えば俺への誤解が深まることは明白だ。どうしたものか。


「ダメだよ。ゆーくんはここで待ってるの」


すると、意外にも月城は俺を引き止めた。


「待ってる? お前が言うには俺が呼び出したことになってるんだろ?」


一体どうするつもりなのだろう。此方からふっかけた約束を、すっぽかし、このままいかなければ、どう足掻こうと俺の信用が失われる事は確かだ。


まあ、元々ないのかもしれないが……。


「ゆーくんが私以外の女に会うなんてこと、絶対許さないよ?」


月城は怒ったようにそう言うが、一体俺の携帯で呼び出したのは誰だっただろうか?


「そんなこと言ったって」


俺は吐き捨てるようにそう言う。


「ダメ。ゆーくんは待ってるの」


しかし、月城は揺るがない。どうにもこうにも芽衣との約束をすっぽかすという手段しか俺には残っていないのだろうか。


「芽衣はどうすんだよ」


俺がそう言うと月城は自信満々笑って見せた。


「責任持って私が行ってくる」


俺は思わず取り乱す。


「月城が?!」


メッセージ上では俺と芽衣が交わした約束に、芽衣からみたら全く関わりのない相手が来ては、どう考えても修羅場不回避だ。


「うん! ゆーくんはちゃんと待ってるんだよ?♡」


しかし、月城は優しくほほ笑みかける。


「いや、俺が……」


俺は一応、細い声で訴えてみるが、やはり月城には届かない。


「大丈夫だよっ♡ ゆーくんは待っててね!♡」


一体何を考えてるのか。月城はそう言うと俺の拘束を解かずにスタスタと消えていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] これが、ホラー作なら、行ってきたよ、はいお土産で、生首とかだろうが。
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