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あ、地面。
ようやく階段から解放された。私は安堵のため息をつき、道が続いている方へと歩く。
「こんな場所よく作ったわね」
思わずこの家の仕組みに感心してしまう。
どういう用途で設計されたのか全く分からない。普通はピザ窯から地下へと続く道を作ろうなんて思いつかない。
しばらく歩くと、ガンッと何かにぶつかる音がした。
痛ッ、と小さな声を発して、私は足元の方へと視線を下げる。それと同時に、灯が足元を照らしてくれる。
「すごッ、灯って空気読めるんだ……。じゃなくて、なにこれ」
足元にある四角い箱を見つめる。いかにもって感じの箱だ。古臭いけど、幾何学模様が描かれていて、中に重要な秘密かヒントかが隠されていそう。
開けても大丈夫だよね?
いきなり煙が出てきて、年老いたりしないよね?
後二年しかないのに、おばあさんで生きるのは嫌だ。せめてピチピチの十八歳で死にたい。
魔法や妖精が存在する世界なのだから、いきなり老婆になることも大いにあり得る。
「やっぱり無視しよ」
この箱の中から特に強い刺激臭がするわけでもない。妖精はいないと思う……。
「ん~~、けどやっぱり気になるな~~」
このままだと独り言がどんどん多くなっていく気がする。
ダメだ、早く決断しよう。おばあさんになっても、何とか魔法で元に戻すことが出来るかもしれない。
とりあえず、これを持って前に進もう。
今、開けるのはリスクが高すぎる。せめて妖精をゲットしてからだ。
投げたら潰れそうな箱を丁寧に持って、前へと進んだ。
一体どれくらい先まであるのか分からない。壁に書かれている赤い文字などもう気にしなくなってしまった。
それに、さっきも少し読んだが、ずっと同じことが書かれているだけだった。
気持ち悪ッ、っていうか、悪趣味……?
いや、妖精を閉じ込めるためなら仕方のないことだったのかもしれないけど……。それでも、自分の家のどこかにこんな場所があると思うと寒気がする。
妖精のためにここまで出来るなら、王宮に届けて、そこで管理してもらう。
「うわ、出た、右か左かに分かれる道」
私は足を止めて、じっと二つに分かれた道を見つめた。
……なんでわざわざこんな迷路みたいな道を作った?
設計者よ、私に喧嘩を売っているのか? 果たし状でも書こうかい?
こんな道の決め方嫌だけど、臭いで判断するしかない。
犬みたいだな、と思いつつ私は右と左の道の匂いをそれぞれ嗅いだ。……両方臭い!!
どっちかより臭い方に進もうと思ったけど、両方とんでもなく臭い。慣れてきたとはいえ、やはり鼻が悲鳴を上げている。
……芳香剤や消臭剤が役に立たない場所はどこって聞かれたら、私は間違いなくこの場所をピンしよう。




