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ピザ窯の中に地下への階段があるなんて、なんか脱出ゲームみたい。
……いや、いくら体験型の脱出ゲームでもピザ窯の中に地下へと続く道は作らないか。
ここの前の住人の人はどういう気持ちでこんな道を作ったのだろう。
「王族の考えることは分からないな……」
独り言を呟きながら、長年掃除されていないであろう階段をゆっくりと降りていく。木で出来ているのか、ギシギシと恐怖心を煽る音が鳴り響く。
……階段の寿命がもうすぐきそうなんだけど、大丈夫?
私の寿命よりも短い気がするよ。あと二年は絶対にもたない。私が今日この階段を使うことによって、階段の寿命は間違いなく一年は縮んだ。
「今にも壊れそうだし」
さっき作ったいくつかの灯のおかげで、足元を滑らすことなく階段を降りることが出来ている。
もし、魔法が使えてなかったら、今頃階段から落ちて死んでいたかもしれない。……死ぬってことはないか。
足の一本ぐらいは折れていただろう。
「……てか、いつまで続くの!?」
降りても降りてもなかなか地面に到達しない。
私はふと壁に目を向ける。その瞬間、ゾッと背筋に悪寒が走った。
ピザ窯に入ってから初めて一人でここまで来てしまったことを後悔する。
な、なによ、これ……。
文字? ……血で書かれた文字? え、呪文?
頭の中が混乱する。
壁には乱暴に赤い文字がずらりと並んでいた。まるで死ぬ前に必死に書いたみたい。
書くならもう少し丁寧に書いてほしい。解読不可能なぐらい文字が滲んでいる。
「王家の人って趣味悪いな~~」
私は近くの灯を壁の方へと近寄せて、じっくりと見つめた。
目を凝らせば、なんとか読めるかもしれない。人が書いた文字って考えると、同じ人間である私も読めると思いたい。
……汝、光の世界を、知ることなかれ?
永久に闇の中に……ん~~~、読めないっ!
とりあえず、お前はもう一生ここから出られねえぞ! って言っているんだよね?
シアラ、そのちっさい脳みそで考えるんだ。
…………妖精はこのピザ窯に閉じ込められたってこと? それで、腐り始めているってことでいい?
確かに下に行けば行くほど刺激臭が強くなっていく。
この階段を降りた先に、妖精がいることは確かだと思う。ただ、妖精を捕まえたところでどうやって元の状態に戻すのかは未だに分からないけど。
なるようになるか……。私が前世の記憶を取り戻してからも、ここまでなんとかやってこれたんだ。
きっと大丈夫!!
「とりあえず、下に向かうか……」
ちょっとビビりながらも後戻りはできない、と自分を鼓舞させて階段をひたすらおり続けた。




