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死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
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 私たちはぐるっと一通り家の中を全て探索した。特に怪しい人やモノはなかった。

 二階は本当に何も置かれていなかった。部屋と部屋を仕切る壁すらもなかった。大きな一つのフロアになっており、パーティーでも開けそうな雰囲気だった。

 状態は非常に良かった……が、キッチンだけがとんでもない悪臭を放っているという状態だった。

 

 鼻がもげるかと思ったもん。

 どうしてあんなに臭いんだろう。何かやばいものとかなければいいけど……。

 あの場所はガスマスクをしないと、もう一度入れない。それぐらい危険区域だよ。

 立ち入り禁止のテープとか貼っておかないと、死人が出ちゃう。


「レイ様もあのキッチンに行って来てください」


 私がキッチンで苦しんでいる様子を見たからか、レイとナタリーはキッチンだけに足を踏み入れなかった。

 私の二の舞になってよ!!

 こんなに辛い思いをしているのは私だけだなんて悲しすぎる。辛さもシェアしていかないと。

 辛い気持ちを共に感じてこそ絆は深くなるんだよ。


「臭いんだろ」

「はい、人間に嗅覚が備わっていることを呪うぐらい臭いです」

「……それを聞いた後に俺が行くと思うか?」

「婚約者なんですから、私と同じ苦しみを味わって下さい」


 私の言葉にレイは顔を顰める。

 相変わらず私は無茶苦茶なことを言っているなと思う。

 私は彼を「ちょっとだけでいいから行って!」という念を込めてじっと見つめる。


「あ~~、分かったよ」


 例は面倒くさそうにそう呟いて、キッチンの方へと歩いていく。

 やった!!勝った!! 

 これで共にキッチン悪臭被害者の会を作れる。会……というか同盟かな。ナタリーは絶対にキッチンの方に行ってくれないだろうから。

 ナタリーは「可哀想に」という目でレイを見送る。私は目をキラキラさせながら彼の背中を見送る。

 一体あのクールなレイがどんな反応をするのか気になる。


「レイ様ってお嬢様にはとてもお優しいですよね」

「……そう?」


 ナタリーの発言に私は思わず首を傾げてしまう。

 言われてみれば、原作のレイはどの女性にも冷たい態度を取っていた。特定の女性に優しくするなんてことは一切なかった。

 優しい心の持ち主ではあるから老若男女問わず命懸けで守るような男だけど、女性に好意を持たれてもそれに応えるような態度は一切取らなかった。

 ……エミリーには親切に接していたけれど、それはセオドアの婚約者だからという理由だろう。

 

 じゃあ、私ってすごいじゃ~~ん!

 あのレイに優しくされているんでしょ? 

 例え、私の立場を利用しなければならないから私に優しくしているのだとしても、レイに特別扱いされるのは嬉しい。 


「公爵令嬢の立場は死んでも守り切ってやる」

「きっとレイ様はお嬢様が公爵令嬢じゃなくても……」

 

 ナタリーが何か言っていたが、あまりに小さな声で聞き取れなかった。

 そんなに小さな独り言ある!? と思い、私はナタリーの方へを視線を向けた。

 彼女は「何にもありません」と首を横に振る。

 気になるけど、私に言いたくないのなら無理に聞く必要もない。


「二年後、レイは泣いてくれるかな~~」


 キッチンの方を遠い目で眺めながら、独り言を呟いた。

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