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家の中は、少し埃っぽかったが清潔感が漂っていた。綺麗さっぱり家具などは無くなっていたけれど、どこか前の家の主の温かさを感じる。
家を愛し、家に愛されていたのだと思う。
歩く度に床がキシキシと音を立てる。それぐらい古くからあるのだろう。
……改装した形跡がない。この家が本当に好きだったんだね。
今から私が思いっきり改装してしまうことに対して少し罪悪感を感じてしまう。けど、ここはもう私の家だから、何をどうしても誰にも咎められない!
私は奥へとどんどん足を進めていく。
この家がどんな風に建てられたのか早く知りたかった。レイとナタリーを置いて、キッチンの部屋へと足を踏み入れる。
……なんか、かび臭っ!!
鼻の奥がツンっと刺激され、「うえっ」と思わず口元を右手で覆った。
なんかキッチンの臭さ半端ないんだけど……。一体何があったらこんな臭さになるの?
この臭いを武器にしたら、世界征服出来るぐらいの破壊力。鼻がもげてしまう!
涙が出てきそうなぐらい私の鼻とは相性が悪い匂いだ。
「くっさ~~~」
私は急いで、キッチンから出た。キッチンの前で咳き込む。そんな私の様子をレイとナタリーは静かに見つめていた。
……いや、助けろよ。
てか、ナタリーは私の侍女なんだよね?
そんな冷たい目で私を見ちゃだめでしょ。もっと敬意を持って、持てないだろうけど、持って!!
なんだかあの猛烈にきつい臭いが体に染みついたような気がする。
私は自分の身体を軽く嗅ぐ。その間レイとナタリーがなにか会話していたようだが、臭いの方に意識が向いていて聞こえなかった。
「……あいつ、怖いもの知らず過ぎないか?」
「ええ。お嬢様はそんな方です」
「噂と少し違うな。……卑屈には見えないし、エミリーを虐めていたとはにわかに信じがたい」
「……そうですね。そのあたりのことは私からはあまりお伝えできませんが、今のシアラお嬢様が本当の姿です」
「俺は自分の目で見たものだけを信じている」
「…………レイ様がそういう方で良かったです」
なにやら仲良さそうに会話している彼らへと視線を向ける。
あの二人、何を意気投合してるのだろう。
第三者の目で彼らを見つめると、とても大人びて見えた。レイもナタリーも二人して落ち着きが半端ない。
もしかして人生七周目ぐらい?
「いいなぁ、私も仲間に入れてほしいな~!」
私はレイとナタリーに聞こえるような声を出す。レイはチラッと私の方を見つめた。
神秘的な美しい瞳と目が合う。思わずドキッとしてしまう。……しかし、この「ドキッ」はイケメンを見て死亡した時の効果音である。
断じて恋などではないと信じたい。レイの顔が良いから、心臓も反応しているだけだ。
「百年早い」
「じゃあ、百年後仲間に入れてよね。一緒にお揃いの入れ歯つけなが話し合おうね」
満面の笑みでそう答えると、レイは露骨に嫌な表情を浮かべた。
私ってば婚約者なのに、めっちゃ嫌われているじゃ~~ん!




