60 シアラのお店
「……暗い雰囲気を出して悪かった。そうだな……、最期の最期まで俺んちのケーキ食べ続けてくれ」
そう言って、リアムはどこか吹っ切れたように笑った。
私の前で笑顔の仮面を被っているだけかもしれない。それでもいい。私の前では笑っていてほしい。
……レイにも笑ってほしい。彼の笑顔を見るまで私死ねないし。
「もちろん! ケーキだけは無限に入る胃袋持ち合わせているからね」
「確かにこの量をペロッといける胃袋は最強だ」
良かった。いつものリアムに戻った。
これでこれからも冗談を言い合えるし、楽しくケーキも食べれる。リアムが友達になってくれて本当に良かった。
「じゃあ、今日はもうそろそろ行くね」
私は最後の一口のチーズケーキを口に放り込む。ケーキが口の中で溶けていくのを噛み締めながら、その場に立ち上がった。
「もう行くのか?」とリアムは少し寂しそうに聞いて来る。
「死ぬまでにやることリストがあるからさ」
「それなら仕方ないな。楽しんで」
「ありがとう」
私は心からの笑顔を彼に向けた。
きっとリアムがいなかったらあの家も見つけることが出来なかった。この街で未だに彷徨っていることになっていたかもしれない。
そう思えば、あの日は本当に偶然が重なっていた。
リアムに出会って、物件を教えてもらって、レイと遭遇して家まで連れて行ってもらって。それで今、私はレイと婚約しているんでしょ?
…………凄いな、私。超ラッキーガールじゃん! 後二年間この幸運が続きますように!
私とナタリーはリアムのお店を出て、また馬車に乗りお店になる場所へと向かう。
ニューオープンの為に大まかなことを決めた後、ナタリーの姉の家へと行くことにした。
起業する人って大体お金持ちばっかりだよね。よっぽどずば抜けたアイディアを持っていない限り、お金持ちの娘や息子が起業しているイメージがある。
事業でこけても、実家が太ければなんとかなる。…………厳しいけどこれが世の中なんだよね。
子どもは親を選べない。だから、今の環境で必死に足掻かなければならない。
そんなことを考えていると、いつの間にか馬車が止まっていた。
私とナタリーは馬車から降りて、お店の前に立つ。やっぱりパステルカラーの水色と黄色の家は可愛らしい。
王家の者が住んでいた家って言ってたし、外見はこのままでいいような気がする。
お店だから、入り口を変えないと……。
何故か、この世界にショーウィンドウという概念がない。店に入るまでにどんな服やどんなものが売っているのかちゃんと分からないのである。
今こそショーウィンドウを取り入れるべきだわ! 画期的な発想が大切だもの!
…………まぁ、ショーウィンドウは私が閃いた発想じゃないけれど。
あ、後、マネキンにもこだわりたい。
何よりも多くの人の目につきたい。気軽に入って来れるようにしたい。高そうだから、って入るのを諦めて欲しくない。
私は家の前で立ちながら、あれこれと頭の中でお店の外観について考える。




