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「なぁ、嘘だよな?」
リアムの瞳は少し潤っていた。
折角友達になれたのに、その友達があとちょっとで死ぬなんて、そりゃ悲しいよね。私もリアムの立場なら号泣してると思う。
私は否定することが出来ず、黙ってしまう。
「冗談だって言ってくれないのか?」
「言いたいんだけどね……」
私は苦笑する。
今は変に冗談を言ってはいけないような気がする。本能が「シアラ、喋るな」と私に告げている。
余計なことを言わないように、私は口を閉じる。
ナタリー、何か面白いこと言ってくれないかな……。
彼女の方を向いて目で訴えかけたが、「無理です」と意味が含まれた満面の笑みを返されてしまう。
暫く沈黙が続いた後、感情を爆発させたようにリアムが声を上げた。
「なんでシアラが!!」
ほんとだよ。放火されて死んだり、大病で死んだり、踏んだり蹴ったりな人生だよね。
私は心の中でリアムの言葉に激しく同意する。
あの神だけは許せない。信用しちゃいけない神様、第一位だ。次にまた私の頭の中に現れたら、平手打ちしてやる!
そんなことを思いながらも、私はちゃっかり新たなケーキを食べ始めている。
ああ、このベリーの甘酸っぱさ!! たまらない!
何個でも食べれちゃう、このケーキたち。数秒もしないうちに一つのケーキを食べ終えてしまう。
私同様ケーキの命も儚いね。
「どうにかして助かる方法はないのか?」
「あったら誰も苦労しないよね。……リアムだって知ってるでしょ?」
ファデスという病名を知らない国民なんていない。
小説の中で、とても恐ろしく何よりも苦しいと言われていた病気だ。ファデスにかかれば、早めに誰かに殺してもらった方が良いと言われているほど苦痛が伴うらしい。
……よくそんな病気に耐えてきたよね、シアラちゃん。それにあんな家庭環境で……。
痛みや苦しみを感じないことに関してはあの神に感謝しなければならない。唯一感謝できるところだ。
あ、あと、私の大好きな小説に転生させてくれたことにもお礼を言っておかないとね!
ありがとう! でも、許さない!! しばく!!
少しは長生きできる人生を歩ませてほしい。私はまた新しいケーキを口に入れながら懇願した。
「……この病気のこと、他に知っている人はいるのか?」
「ナタリーと医者のベンぐらいかな……。後は、父には何かしらの病気ってことはバレてるけどファデスってことは知らないと思う。弟のブレナンは……、う~ん、察してないと思うよ、てか思いたい。てか、このチーズケーキも美味しいね」
最後の一言は不要だった気がする。それでも、美味しすぎて言わずにはいられなかった。
心の声をすぐに口に出してしまう癖をやめたい。余計なことをどんどん言ってしまう。
害悪女にだけはなりたくない!
死ぬまでに空気を読むスキルを磨こう。脱KYになって死にたい。
死ぬ間際に「あいつ、本当空気読めない女だったよな~~」なんて言われて死にたくないもん。
窒素と酸素と二酸化炭素ぐらいはちゃんと区別できるようになりたいな! ……なんて、こんなボケも呟けないほどこの部屋の空気は重たかった。




