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「ややこしいって何が?」
そんなに知りたいなんて、私のこと大好きじゃ~ん。
次のケーキへと手を伸ばす。こういう時こそ糖分! ザッハトルテこそ正義!
濃厚なチョコの味を噛み締めながら、リアムの方へと視線を向ける。
「時には知らない方が良い情報もあるんだよ」
「お嬢様、口元にチョコがついております」
あらら……。
ナタリーの言葉に私は急いでテーブルの上に置いてある紙ナプキンで口全体を拭く。
かっこつけて喋っていたのにさ! 全然決まらなかったじゃない!
リアムはそんな私のおちゃめな部分に対して触れることなく、話を続ける。
「それでも俺は知りたい。シアラがどんな病気なのか知りたいんだ。何か役に立つかもしれない」
それが、誰も私を助けられないんだよ。
神様をもう一度私の頭の中に呼んできてくれるっていうのなら話は変わってくる。リアムにそんな力があるとは思えないけど……。
ナタリーの方をチラッと向くと、彼女は目で私に「彼には本当のことを言った方が良い」と言っていた。
確かに、後から傷つくよりかは今本当のことを言ったの方が良いのかも。
何も言わないで上手くフェードアウトする方法を探そうと思っていたけど、死ぬ直前までここのケーキを食べたい。
不治の病って分かれば、ケーキを割引してもらえるかもしれない!
よし! 言おう!
「あのね、私ファデスなの」
私は深刻な雰囲気を出来るだけ出さずに明るい声を発する。
病名を聞いた瞬間、リアムは固まった。彼は目を見開いたまま「ふぁ、です」と私の言葉を繰り返す。
煽りの「ふぁ?」を敬語にしたみたいな発音になってる。
レイもこんな反応になるのかな。……彼には絶対に隠しておこう。
彼は私の公爵家という立場を利用するために私と婚約したのだ。二年後に死んでしまう女なんて誰が求人募集をするんだ。
上手く隠していけますように!!
……あ!! そういえば、リアムに婚約したことを言い忘れていた。
いや、でも今これ以上彼に衝撃を与えるのはまずい。何が嬉しくて、爆弾発言を連続で食らわなきゃいけないんだよってね。
「ファデスって、あの、あの病気か?」
ややしどろもどろになりながらも、リアムは私の目を見てそう聞いた。
私は「イエスッ!」と右手の親指を立てる。
ナタリーは、もう少し空気を読んで、みたいな視線を私に向けてくる。それでも、私は彼女に従うつもりは一切ない。
しんみりした雰囲気が苦手なんだよね。特に自分のせいでそんな空気になるのはもっと嫌だもん。
だから、私は死ぬまで明るく元気に生活し続けてやる!
私が暗くなったら、もっと周りが暗くなる。二年しか生きることができないって分かっているのだから、わざわざ陰鬱な雰囲気の中で余生を過ごしたくない。
楽しかったよ~! 皆ありがとう~~! って言いながら、スキップで天国に行きたい。……地獄かもしれないけど。
地獄だったら閻魔様に媚を売りまくって、極楽浄土な生活を与えてもらえるように頑張ろう。




