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まだ耐え! って言いたいけど、そんなことを言えるような雰囲気じゃない。
……もっと場を明るくしていこうよ! まだお昼だよ?
こんなに暗い雰囲気を醸し出していたら、太陽に失礼だ。
私は口角を上げて、明るい声でリアムからの誤解を解こうとする。
「死ぬわけないじゃん。ぴちぴちの十六歳なんだから」
トレイに置かれていた苺の乗ったショートケーキをフォークで突き刺す。
とりあえず、今は目の前にあるこのケーキたちを食べたい。リアムが戸惑っている間に私はケーキを口に運び、至福の時を過ごす。
「ナタリーも食べて?」
私はケーキを一口食べ終えると、他のケーキを指差しながらナタリーの方を向いた。
「でも、私は」
「いいから、めっちゃ美味しいから、食べなきゃ人生損だよ。早く食べて」
遠慮するナタリーに半ば強引にケーキを食べさせようとした。彼女は私の圧に負けたのか、ケーキへと手を伸ばす。
ナタリーがモンブランに手を伸ばす様子を満足気に見つめていた。
「本当に死なないんだよな? 持病とかもないんだよな?」
ケーキの美味しさに体がとろけそうになっている私たちに、リアムは険しい顔つきのまま質問する。
この話題から早く話を逸らしたいと思いながらも私は「大丈夫だよ」と誤魔化す。
「……答えになってない。大丈夫かどうかじゃなくて、持病はないのか?」
察してよ、という女の子の台詞はあまり好きじゃないけど、声を大にして言いたくなった。
察しなよ!! 女の子にモテないよ! 時には言いたくないこともあるのよ!
折角友達になれたのだから、リアムに心配を掛けたくない。……それでも、こんなに真剣に聞いて来る彼を見ていると嘘は付けない。
ファデスは助かる見込みがゼロだ。ファデスにかかれば「死ぬ」という未来しかない。
そんな病気を患っているとリアムに告げるのはなんだか心苦しい。
…………そういえば、一番最初に神様と話した時に私が助かる方法があるみたいなこと言ってなかった?
途中で消えちゃったから、ちゃんと聞けなかった。
あれ、どういう意味だったんだろう……。ちゃんとしろ、神様!!
「何の病気なんだ?」
ある意味、察してくれたリアムが私にそう質問した。
ナタリーはリアムが私にこれ以上質問するのを止めようとしたが、リアムは私のことしか見ていなかった。きっと、ナタリーに何を言われても、私から直接聞くまで諦めないつもりだ。
普通、出会って間もない友達に病名言ったりしちゃう?
もうちょっと親睦を深めようよ、とか私は逃げ道を探す。出来るだけ遠回しに私の病気を伝える方法を必死に頭の中で模索している。
「人に言えないような病気か?」
「いや、別に伝染病とかじゃないよ。ただ、ちょっとだけややこしいってだけ」
これが限界だ。これ以上何も追及するでない、リアム殿。
前世で死んだ時の話ならいくらでもしてあげるから、今世の死ぬ理由はまだ聞かないで。




