表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
51/74

51

「話はまだ終わってないわよ! まだお母様にも謝っていないじゃない! 全てを台無しにした責任を取りなさいよ! セオドア様にホワイト家の醜態を見せたのよ!?」

 

 私と会いたくないって言ったのはエミリーの方なのに、今じゃ私と随分と話したがっているじゃない。

 去ろうと思えば、話しかけてくる。私のこと大好きじゃん!


「所詮、あの女の血を受け継いでるってことね!」 

「あ~、もう、いい加減にして?」

 

 私は母を出されたことで、何かがプツンと切れた。私の低い声と冷たい視線に彼女はビクッと小さく体を震わせた。


「あの時、彼女は全てを台無しにしようとしてたのよ? それを私が阻止してあげたの。むしろ感謝して?」

 

 私は目だけでにっこりと笑った。

 実母のことは全く知らない。それはエミリーも一緒だ。母のことを何も知らないのに、貶さないでほしい。

 きっと私の母は父に妻がいることを分かっていただろう。なんたって、父はホワイト家の当主なのだから。

 そういう意味では、たしかに母にも非がある。それでも、やっぱり母を悪く言われるのは良い気がしない。

 エミリーは私の言葉で少し冷静さを取り戻す。


「もしあのままお母様が暴走していたとしても、私は止めるつもりはなかったわ。貴女になんて絶対に感謝しない。…………私は、貴女が幸せになるのが許せない」

「私はエミリーに幸せになって欲しいよ」

 

 良い人を演じるためにエミリーにそんなことを言ったんじゃない。本心だ。

 だって、この小説が大好きだったんだもの。

 一ファンとして、ヒロインには幸せになってもらわないと! 私が死ぬまでにね!

 

 エミリーは「ハッ」と鼻で笑う。私の言っていることを全く信じていない。

 そりゃそうだよね。「あんたが言うなよ」って言いたくなるよね。私もエミリーの立場ならそう思っていると思うよ。

 

「私がそんな台詞で懐柔されると思った? 私は騙されないわ」

「私も騙す気ないから安心して」


 あまりにも敵対心を向けられすぎて、もうどうでもよくなってきた。

 エミリーとちゃんと話したのはこれが初めてだけど、少しも距離が縮まらなかった。むしろ、関係が悪化した気がする。

 まぁ、人間同士なのだから合う合わないはあるよね。適当に距離置いてこ!


「じゃあね~」


 エミリーはまだ私に対して何か言いたげだったが、私はエミリーの隣をスッと通り、その場から離れた。

 さっきは二人に会いたくなくて来た道を戻って行ったけれど、本当はこっちの方面に進みたかったのよね。

 ナタリーはブレナンとエミリーに軽くお辞儀をして、私について来る。


「どこに行くんだ?」


 後ろからブレナンが私に声を掛ける。

 私は振り返らず、前を向いて歩きながら「ひみつ~~」と彼らに聞こえるように呟いた。

 エミリーはこの後、私を監視するだろう。従者に「あの女を尾行して!」って言うんじゃないかしら。

 そんなドラマみたいな台詞、死ぬまでに一度は言ってみたい。「前のタクシーを追って」みたいな緊迫感と一緒だよね。

 悲しきかな、私は犯人側なのよね。なんとか逃げ切らなければならない。


「……ナタリー」

「なんですか?」

「今から私たち追われることになると思うの」

「妄想ですか?」


 本当に失礼だね、ナタリー。もう少し私に対する敬意を持って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ