46 ナタリーの姉
スカートの部分が何重にもなっている真っ赤なシフォンドレスを着て、鏡の前で容姿チェックをする。
相変わらずどんな種類のドレスを着ても似合う体型だ。体型維持だけは気に掛けておかないとね。
化粧と髪は、今日は最高に綺麗にしてもらえたから、服装だけ変えるだけで完璧になった。
コンコンッと扉がノックされ、ナタリーは部屋の中へと入って来る。彼女の持っているとレイには水とカプセルの薬が三粒置かれていた。
「お薬です」
ナタリーから薬を受け取り、私は一気に飲み込む。
何も味はしないが、薬を飲むのは苦手だ。噛まないで飲むのって案外難しいのよね……。
「あの、一つお聞きしてもいいですか?」
彼女は恐る恐る私を見つめながら声を発する。
私は首を傾げながら「いくつでも質問して」と答える。
「そのデザイン画ってお嬢様が描かれたのですか?」
ナタリーは私が先ほど乱雑にベッドの上に置いたデザイン画を指しながら大きな声を出す。
私はデザイン画に視線を向けながら、いくつかのデザイン画を手に取る。
「ええ、どう思う?」
そう言って、ナタリーにデザイン画を渡す。彼女はキラキラした瞳でそれらをじっと見つめた。こんなに興奮してるナタリーを初めて見る。
「と、とっても素敵です! 私もいつかこんな服を着てみたいです」
「着れるわよ」
私の返答にナタリーはポカンと口を開ける。
「私が設立しようと思っている店のターゲットは平民だからね」
「お店? お嬢様が? ……え? ええ!?」
困惑するナタリーを落ち着かせる為に、私は今からしようと思っていることを説明する。自立するために店を出そうと思ったことやもう街まで出て店を開く場所を見つけたことなど。
勿論、レイが支払ってくれたことは隠しておいた。
彼女は眉間に皺を寄せながら黙って話を聞いてくれた。全て話し終えると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「……あの、お嬢様、何をしてるんですか?」
それが普通の反応よね。逆にすぐに受け入れられたら、驚きだ。
「自立しなくとも、お嬢様はホワイト家の令嬢ですよ?」
「まぁ、そうなんだけど……。私って嫌われ者だし?」
「もし追い出されそうになっても私が阻止します!」
嬉しいことを言ってくれるわね、ナタリー!
小説の中でも最後までシアラの味方だっただけのことはある。彼女の強い意志に拍手を送りたい。
「それに、街の皆が着ているドレスってどこか華やかさが足りないと思わない?」
「確かに言われてみればそうですね」
彼女は街の人々を思い浮かべながら頷く。
残りの短い人生で何を出来るか分からないけど、少しでも生きていて良かったって思いたい。人生を充実させないと時間が勿体ない!
後は魔法の修行に行くことが出来れば一番良いのだけれど……。
まぁでも、死ぬ日が分かっているからこそ予定が立てやすい。明日死ぬよ、とか言われたら、何をどうすればいいか分からないし!
二年後って短いようで意外と長い。精一杯楽しむんだからね! 神様見てろよ!
私が今後の人生のことを考えていると、ナタリーはどこか意を決したように私を見つめ、口を開いた。
「あの、私の姉に会ってもらえませんか?」




