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私はセオドアとレイを見送り、自室へ駆け足で戻った。机に置いてあるデザイン画を手にして、また急いで部屋を出る。
これから素晴らしい人材達を探しに行かないといけない。もたもたしている暇はないわ!
「お嬢様!? どこへ行かれるのですか?」
ナタリーが目を丸くして私を見つめる。
母を寝室へと送ったナタリーが私の元へ向かって来ているところだった。立ち止まり、「母は?」と尋ねる。
「今はお部屋で寝ています」
「そっか」と私が呟くと、ナタリーは小さく笑った。
馬鹿にしたような笑いでも、呆れるような笑いでもない。本音が漏れたような笑いだった。
「あれは見物でした」
「そ、それほどでも~」
頭に片手を置いて、照れた素振りを見せると、ナタリーは真顔で「決して褒めているわけではないです」と突っ込む。
「あんなことするなんて信じられません。令嬢としてあるまじき行為です。……が、私もスッキリしました」
そう言った彼女の表情はどこか清々しく見えた。私はその顔を見て、思わず表情を緩めてしまう。
ナタリーが味方で良かった。もうズッ友だよ!
「それで、どこに向かわれるのですか?」
「街の方に少し行こうかなって」
「馬車を出します」
ナタリーの圧力に私は「分かった」と頷く。
ウマに乗って、移動していたのが耳に入らないわけないよね。これから乗馬でどこかに行くなんて禁止にされるかもしれない。
「それと、私も一緒に行きます」
大丈夫、と言おうと思った瞬間、咳き込んでしまう。体が痛くなることはないが、咳で息がしづらくなり、少し苦しい。
あ、これはまずい。ナタリーは私の病気知っているもんね。
言い訳を考えていても何も出てこない。
「お嬢様! 大丈夫ですか!? 今、医者を」
「だめ!」
つい大きな声が出てしまった。
私の咳はもう静まり、掌を見つめる。血がべったりとついている。吐血する感覚に段々慣れてきている自分がいた。
うわぁ、ゾンビごっこ出来そう。
「ですが……」とナタリーは瞳に涙を溜めながら私を見つめる。
本来なら医者を呼んだ方がいいのだろうけど、呼んだところでどうにもならない。部屋で寝たっきりになるだけだ。
「心配しないで。私はやるべきことがあるの」
私はナタリーが落ち着くように微笑む。
ドレスにも血がついてしまったから着替えないといけない。折角綺麗にしてもらったのに……。
まぁ、ファデスにかかっていて、ドレスが汚れるぐらいで済んでいるのならましかな。本来なら、倒れているだろうし。
「お薬だけでも持って来ましょうか?」
ナタリーは必死な目で私を見る。
……これは断らない方が良いか。ナタリーを安心させる為にも薬を飲もう。
「ええ、お願い。ありがとう」
私の返答にナタリーはホッと安堵の息を漏らし、「すぐに持ってきます」と駆け足でその場を去って行った。
「また着替えないとね」
私はデザイン画を血で汚れないように持ちながら、自室へと戻る。
クローゼットを開き、じっとドレス達を見つめる。少しの間、色彩豊かなドレス達を見つめながら考えた。
……う~~ん、今日は勝利の赤かしら。なんたって、初めて義母に勝った日だもの!
私はクローゼットの中から自分と同じ瞳の色をしたドレスを取り出した。




