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死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
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「それでも公爵令嬢であることには違いない」


 セオドアもやはり義母の言葉を不快に感じたのか、落ち着いてた様子でそう言ったが、声に怒りが籠っているのが分かった。

 彼の言葉に義母はばつの悪い顔をする。

「そこでだ」と、セオドアは話を切り出した。父はその声にビクッと体を震わせる。

 もう、大公爵様なんだったら、もっとピシッとしなさいよ。そんなに王子が怖い?

 ……あ、愛娘の婚約取り消されたら困るもんね。でも、安心して! 愛娘じゃない方の娘が婚約することになるから!

 しかも、レオだと将来お金で苦労するようなことも絶対にない。死ぬ運命なのに、私ってば幸せ者~!


「私の側近レイ・アシュビーとシアラ嬢の婚約を考えている」


 セオドアの突然の発言に家族一同は固まる。

 そんないきなり言われても理解出来ないよね、分かるよ。昨日の私もそうだった。

 けど、昨日のおかげでしっかりとセオドアの免疫がついた私は、さっきの彼の発言で、あれ、セオドアって一人称って俺じゃなかったっけ? なんて考えていた。


「こ、こんやくですか?」


 ようやく声を出した父に「ああ」とセオドアは返事をする。


「何か不満か?」


 そう付け足すセオドアだが、誰も反応出来ない。きっと、私が婚約するなんて空前絶後の出来事だったんだろう。

 きっと、義母はどうにかしてこの婚約の話をなしにしたいはずだ。だって、シアラを幸せになんかしたくないもんね。

 けど、王子の決定を覆すことなんて出来るのかな。


「この子は出来損ないの娘ですよ」


 義母の困惑した声が部屋に響く。

 私を出来損ないにしたのはあんただろ、とつい品のない言葉を心の中で呟く。


「出来損ないかどうかは私が決めるので」


 レイは感情を表に出さず、そう言った。

 けど、義母はこんなところで引き下がるような人じゃない。これから必死で私の悪口を言うんだろうな。

 そして、見事私の予想は的中する。


「この子は、うちの娘のエミリーを虐めていたんですよ。殿下、どうか私を信じてください。騙されているんです。親子ともどもろくでもないんです。非道な悪行を繰り返し」

「では、あなた方は今まで彼女に何もしなかったと?」


 セオドアは義母の言葉に重ねるように聞き返す。

 彼はニコッと微笑む。そして、父の方に視線を移す。


「親子ということは、ジェイコブ殿もろくでもないということですね」


 容赦ないな、この王子。

 え、と父は声を漏らす。エミリーとブレナンはセオドアの圧に怖気づいているのか、硬直している。

 エミリー、近い将来、この王子様と結婚することになるんだけど、大丈夫? メンタル持つ?

 王子は淡々と話をする。

 

「シアラ嬢に衣食住をまともに与えていたのですか? 教育は? ……本当に怖いのは、何も仕返しをしてこなくなった時ですよ、夫人」

 

 こっっっわ。絶対セオドアだけは敵に回さないでおこう。

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