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すべてが終わり、私は自分の姿を鏡で見つめる。
その姿は、物語の悪役じゃなくて、お姫様みたいだった。
私が好きなシンプルで、シアラのスラッとたスタイルの良さがよく分かるようなドレスではない。……でも、本当に鏡で映る私は綺麗だと思えた。
こんなプリンセスみたいな格好も似合うのね……。
一流の服を身にまとうって自分の格が上がった気分になる。このドレスに負けないぐらい私もいい女になってみせる。
侍女達が時間をかけて作り上げた肌を触ってみる。
弾力が餅だ。いや、マシュマロ?
元々シアラの肌はすべすべだったが、さらに強化された。
私の腕にしがみつこうとしても、あまりにツルンツルンで掴めないと思う。一体どんな魔法のクリームを使ったんだろう。
「とってもお綺麗です」
侍女の一人が私をうっとりと見つめている。ナタリーも満足気だ。
またコンコンッと扉の音が部屋に響く。男性の声が聞こえてきた。
「シアラお嬢様、王子が到着いたしました」
落ち着いた声だが、どこか焦っているのが分かる。
私はふぅっとっと息を吐き、姿勢を正す。どうしてこんな気合を入れているのかよく分からないけえど……。
とりあえず、心の中で「いざ、戦場へ!」と叫んで部屋を出た。
応接室に行くと、昨日と違う新鮮で豪華な花が飾られていた。
王子が来ると分かって、急いで取り寄せたんだろうな。義母も大変だ。
ソファには家族全員大集合している。昨日は、全然私に関係ないような素振りを見せていたのに……。
義母は私を軽く睨む。それに対して、ニコッと微笑む。
きっと、彼女はセオドアが自分の娘ではなく、私に用事があるのが気に食わないのだろう。
それもそうだよね。だって、セオドアの婚約者はエミリーだもん。
「おはようございます」
私はビジネススマイルを上座に座っているセオドアとレイに向ける。
昨日ぶりですね、なんて余計なことは言わないでおこう。そんなこと知られたら、明日、私の首と胴体はバラバラになっているだろう。
私は一番端っこにそっと座る。横から感じる義母からの圧が半端ない。
大家が数か月家賃を払わなかった住居者に対して向ける圧力じゃん。私、これからずっとこの圧力を感じながら生きていくのか……。
「やはり、ホワイト家にはもう一人娘がいたんですね」
セオドアの発言に父は言葉に詰まる。
前から知っていたくせに、最近知ったみたいな表情をするのが上手いな。セオドア、君はきっとトップ俳優になれるよ。
「隠していて申し訳ございませんでした。ですが、彼女は汚れた血の子でございます」
そう言って、義母は頭を下げた。「汚れた血」に対してレイが反応する。眉を少し上げて、あからさまに義母に対して嫌悪感を示した。
私はもはや義母にそんなことを言われても何とも思わない。もはや「汚れた血」っていう響きさえカッコいいなと思い始めている。
…………もしかして、彼らはセオドアとレイが私を隠していたことについて言及しに来たと思っているのかな。
だから、こんなに緊迫とした空気なのかもしれない。だって、父なんか顔面蒼白だ。たかが、愛人の子がいるぐらいで、爵位を剥奪されるわけないのに……。
私は彼らの的外れな想像に少し口元が緩みそうになる。
さぁ、これからの展開が楽しみね!




