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死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
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4.医者

「失礼します、お嬢様。医者のベン・カーターです」


 その男性の声に私は少し背筋が震えた。なんて冷たい声。

 眼鏡をかけた丸々とした優しそうな医者……とは程遠い見た目をしていた。

 小説にこんな情報書かれていなかった。


 こわッ。私、ここでこの人に殺されてもおかしくない。


 扉に頭が付きそうな程背が高くて少し猫背の細身、眼鏡はかけているけど、その奥に見える目はとても鋭い。私もつり目だし存在感のある目だけど、そんなのと比べ物にならない。

 頬は少しこけていて、唇にはあまり色がない。私より体調悪そうじゃない。

 医者を必要なのは貴方では? と思わず言いたくなる。

 ナタリーはどうして彼の横でそんなにニコニコしていられるのかしら。彼女は私の味方だと思っていたのに……。

 実際ナタリーはいつも私の味方だった。私がどれだけ酷いことをしても、私の境遇を哀れに思ったのか、私が死ぬまでずっと寄り添ってくれた。


「ざっと見る限り、健康体ですね」


 そりゃそうよ! 血色は良いし、ナイスボディでしょ。

 ぺちゃぱいのエミリーと違って、私は最高のバストを持っているもの。いかにも悪役って感じよね。


「では少し、手を失礼します」


 正直、医者に容態を見られたくない。

 この医者が嫌ってわけじゃなくて、病名を当てられるのが嫌。今すぐ追い出したいわ。

 そんな私の考えなど無視するように彼は私の手に触れる。

 ホワイト家が呼んだ医者だ。きっと、相当な腕の持ち主に決まっている。

 ……あ、でも私にはお金かけないわよね。

 まさか藪医者!?

 

 ベンが私の手のひらをそっと触るとそこから何か光が放出された。そこまで眩しくなくキラキラとしていて、綺麗だったが、段々と真っ黒に染まっていく。さっきのキラキラが嘘だったかのように荒んでいった。

 ……なにこれ。魔法の一種?

 というか、ナタリー、なんて表情しているの。この世の終わりみたいな顔しないで。

 ベンの方をゆっくり見ると、彼の額から汗が流れていた。こんなに冷たい雰囲気を醸し出しているのに、汗かくのね。


「な、なんてことだ」


 彼は、少し声を震わせながら目を見開く。

 数百万人に一人いるかいないかの「ファデス」だもんね。公爵家の令嬢が倒れたと聞いて、来てみたらとんでもない大病だった。よくある設定。

 本来ならこれ絶対私ヒロインの位置!

 どうしてこんな卑屈で歪んだ性格なんだろう。母親が亡くなってなかったら、もうちょっと明るい未来だったのかな?

 ベンやナタリーが血相を変えて動揺している中、私はそんなことを考えていた。

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