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セオドアとレイを応接室に招き、ナタリーが良い香りのするアップルティーを淹れる。
私は一口それを飲み、緊張をほぐす。口の中で甘い紅茶が広がる。ゆっくりコップを置き、彼らの方を見つめる。
「で、何しに来たんですか?」
「まぁ、そんなに迷惑そうにするな。良い話がある」
「逆に怖いです」
私はセオドアに警戒する。
ほとんど面識なんてないのに、いきなり私に良い話を持って来るなんて一体何を企んでいるんだろう。
「君が欲しがっていた家をレイが購入した」
「……あれ? 耳が壊れたのかも」
私は右耳をガンガンと叩いて、姿勢を正す。「今なんて言いました?」ともう一度彼の言葉を聞く。
「レイが街にあるシアラ嬢の欲しがっていた家を購入したんだ」
確かな声でセオドアはそう言った。
聞き間違いじゃなかった。私の耳の機能は正常だったみたい。
けど、まさか本当に購入しちゃうなんて……。王家の血筋の者の家だったんだよね?
混乱している私などお構いなしに、セオドアは話を続ける。
「それで、レイがシアラ・ホワイトにその家を譲ると言っている」
何言っているかますます分からなくなってきたよ。
私、王家から詐欺にあってるのかな?
王子がまだ話し続けようとしたので、私はいったん声を大にして突っ込ませてもらう。
「お! か! し! い!」
あまりの声量に驚いたのか、セオドアとレイは固まっている。
「どうして、私に家を譲ってくれるんですか?」
「欲しがっていただろ」
レイが当たり前のように答える。
普通欲しがっていても、その日初めてまともに話した相手にプレゼントなんてしない。
どんな財力何だろう……、じゃなくて、どんな神経してるのよ!
「失礼ですが、良いお医者様をご紹介しましょうか?」
ベンなら紹介できる。見た目は少し恐いけど。
二人とも少し固まった後、セオドアは大きな声で笑った。レイはもちろん笑わない。
横で主が笑顔になっているのに、よくもそんなに真顔を貫き通せるよね。上司の前では少しぐらい愛嬌見せてる方が気に入られるのに……。
「怖い者知らずだな。確かにこれは興味深い令嬢だ」
セオドアは笑いながらそう言った。
「別に俺はこいつに興味はないですよ」
「だが、お前が俺に頼みごとをするなんて初めてじゃないか。……あ、レイに連れてこられたって言ったが、あれは嘘だ。ただレイが女に家を譲るって言うから無理言って連れてこさせたんだ」
息を吐くように嘘をつくなし。それにレイは訂正して。
「後、他にも色々話さないといけないことがあるからって言うのもあるから来たんだがな」とセオドアは付け足した。
なんとなく彼らの流れに乗って話を聞いているけど、ずっとついていけない。全く理解出来ない。
もう一度落ち着いて、考える為にアップルティーを口に運ぶ。




