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シナリオ通りにならないのはやばいかな?
……いや、でも私の前世の記憶が戻っている時点でシナリオ通りにはいかないよね。
それに、何の知らせもなく勝手に来た彼らも悪い。来るなら来ると連絡してくれれば、私は部屋から出ずにすんだのに!
私は彼らの方を見ながら、恐る恐る尋ねる。
「どこから聞いていましたか?」
「いってらっしゃい、からかな」
セオドアがフッと私をからかうように笑って答える。
最初からじゃん。……うわ、全部聞かれてたんだ。
「あそこの窓から」
セオドアの指の先には、玄関扉の隣についている大きな窓が合った。白い窓縁からは手入れされた花が良く見える。
もう私達の家族ドロドロ劇場をガッツリ見られてたんだ。
きっと王家は最初から私達の家族構成を知っていただろう。表向きは隠していても、王家がホワイト家のことを調べていないはずがない。きっと、この家のことは隅々まで承知だろう。
……私より詳しいかもしれない。
あ! そうだ! 一番大事なことを聞き逃すとこだった。
「エミリーの婚約に支障をきたしますか?」
「……それは大丈夫だと思うが」
「なら良かったです」
私の笑みをセオドアは訝し気に見つめる。その隣にいるレイはこの家に来てから一度も声を発してない。
そもそも、どうしてレイはセオドアをこの家に連れてきたんだろう。
「この状況でも姉の婚約の心配をするとは不思議な女だ。……それにしても、前とは違い、随分と綺麗な格好をしているんだな」
確かに前の私は酷かったもんね。
身なりが令嬢とは思えなかった。それに結構馬臭かったと思う。あれからウマのシャンプーをいい匂いに変えたから、そんなことも、もうなくなると思うけど!
「レイも何か言ったらどうだ?」
ずっと無口だったレイにセオドアが話を振る。ようやく彼の声が聞ける。
「先が短いってどういうことだ?」
……おっと、そこつっこむ?
彼の透き通る声が私の耳によく響いた。射貫くような瞳で私を見る。
セオドアみたいにもう少し笑ってくれたらいいのに……。そうしたら、もう少し話しやすい。
「私はホワイト家の人間じゃないみたいなので、もうすぐ追い出されるかなって思っただけです」
ニコッと笑顔をレイに向けて、誤魔化す。
あと二年後に死ぬんですよね、えへへ、とは言えないよね。それに、私はレイを死ぬ前に笑わしたいんだから!
こんな暗い話をしたら、余計に笑ってくれなくなっちゃう。
「本当にそれだけか?」
「どうして私がわざわざ嘘をつく必要があるのよ」
疑ってくるレイに対して私は冷静に対応する。
流石王子の従者だけあって、鋭い。
「まぁ、私ってこの家の嫌われ者だしッ」
照れるように私は頭を撫でながらそう言った。
自虐ネタで私がファデスを患っていることを誤魔化す。
「確かにそうだな」
「少しは否定してくれても良いのに」
「俺がお前に優しい嘘をつく必要なんてないだろ。嫌われ者は事実だろう?」
「その舌引っこ抜こうか?」
微笑む私にレイが「言ってろ」と答える。
「お前ら仲いいな」
「「どこが」」
セオドアの理解しがたい言葉にレイと同じ反応をしてしまう。
うわ、ハモっちゃったよ。
「ははっ、やっぱり仲いいよ」
楽しそうにセオドアは笑う。
確かに、私も火事で死んで、彼も火事で大火傷を負ったって点では共通点もあるし、気が合うかもしれないけどさ……。




