31.注目
朝日が照らされているクローゼットを開き、送り主不明のプレゼントされたドレス達を見つめる。
……ドレスを選ぶのにこんなに迷ったことはない。
どのドレスを着ればいいのか分からない。というか、家族にこのドレス達やアクセサリーをどう説明すればいいのだろうか。
私はとりあえず、一番最初に目に着いたシンプルで胸元が協調される黒いドレスを手に取った。
アクセサリーは出来るだけ大ぶりのものを手に取る。
なんて輝きを放っているイヤリングなの……。窓の外に出ている太陽よりも眩しいかもしれない。
ドレスに着替えて、髪の毛を梳かし、濃いめのメイクをする。アイラインで私の吊り目が良く映えるようにする。そして赤い口紅を唇に濡れば完成。
……なんと妖艶で悪そうなレディ。
鏡に映る自分をまじまじと見つめてしまう。ハイヒールがより私をいい女にしてくれている気がする。靴はファッションでとても大事な要素だ。
私って、ちゃんとした格好をすれば、こんなにもいい女になるんだ。前世の容姿とは大違い。
これから、色々なファッションを着こなすことが出来るなんて毎日が楽しみだわ。
私もこんな風に気分が上がって幸せになれるようなドレスをいつか作れるようになりたい。
そのためにも早くレイに会って、例のあの家がどうなったのか聞かなければならない。
……とりあえず、前みたいにルイス家に突撃すればいいのかな?
毎度突撃してたら、いつか衛兵に刺されそう。不法侵入者として罰せられたら、私のこの先短い人生を牢獄で送ることになってしまう。
それだけは回避しないと!
とりあえず、私は部屋を出て、ウマのところへ向かう。
屋敷を歩いているだけなのに、何故か使用人たちの視線を強く感じる。
これは、チラ見とかじゃなくて、ガン見だ。
え、もしかして、私知らぬ間に鼻血出しちゃってたりして……。
少し恐くなり、そっと指先で鼻の下を触れる。
「良かった、鼻血は出ていない」
じゃあ、どうしてこんなに見られているんだろう。
もしかして、化粧がとんでもなく下手だったとか? どうしよう、ピエロみたいになっていたら。
前世で見たホラー映画のせいで、ピエロはトラウマなのよね。けど、さっき鏡で自分の顔を見たけど、全然ピエロなんかじゃなかった。
あ! もしかして、黒いドレスは縁起が悪いとか? いや、でも喪服の印象が強いけど、この世界では別に黒いドレスを着ていても何とも思われないはず。
……だったらなんでこんなにガン見されてるの?
悶々としながら廊下を歩いていると、後ろからナタリーの声が聞こえた。
「お嬢様」
振り向くと、彼女は固まったまま私を見つめていた。
「ナタリー! おはよう」
「……すごくお綺麗です」
「え?」
「ドレス、とてもお似合いです」
今度はハッキリとした声でナタリーはそう言った。
周りにいた使用人達も私に見惚れながら大きく頷いている。
…………ぶっちゃけ、恥ずかしい!!
今までこんな注目を集めたことがない。しかも、褒められているって。
エミリーは慣れているんだろうな。
「あ、ありがとう。とりあえず、下に行こ」
少し早足で歩き始めると、ナタリーが「お嬢様、耳まで真っ赤ですよ」と声を発した。
こんな時こそ、瞬間接着剤だよ。その唇を塞ぎたい。
この日から私はこの屋敷の使用人の中で女神と呼ばれるようになったらしい。ちなみにエミリーは天使と呼ばれている。




