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死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
3/74

3.

 医者に「ファデス」だと診断されて、公言されたらどうしよう……。

 感染病じゃないけど、絶対に家から出してもらえない気がする。いや、きっと部屋からも出してもらえない。

 ここは原作通り絶対に黙らせておこう。

 というか、治療されても治らないし、医者に診てもらう必要もないかもしれない。

 コンコンッとの扉をノックする音が部屋に響く。


「お嬢様、ナタリーです。入りますね」


 私がまだ寝ていると思っているのか、侍女のナタリーはゆっくりと扉を開ける。それと同時に私は目を開ける。


「おはよう、ナタリー」


 私が起きていることに驚いたのか、それとも私が挨拶をしたことに驚いたのか分からない。

 ナタリーは目を丸くしたまましばらく固まった。

「ナタリー?」と少し首を傾げて彼女の方を見ると、ハッと我に返ったのか彼女は少し高い声を出した。


「あ、えっと! すぐに医者を呼んでまいります!」


 彼女はそのまま勢いよく部屋を飛び出して行った。

 元気そうで何より。

 今の私は走る気力なんてない。無気力感に包まれている。いかにも病み上がりという状態である。


 死ぬまでの間、どう自分の人生を充実させるかを必死に考える。

 とりあえず、このファンタジックな世界に浸らないとね!


 ヒロインと結ばれる運命のこの国の第一王子セオドア・ルイス。

 王家ルイス家に最も信頼されているのがホワイト家。だから、必然的に彼の婚約者はこの家の誰かになる。……純血の子が選ばれる。

 セオドアは最初は乗り気じゃなかったけど、エミリーと過ごすうちに彼女に惹かれていく。

 彼女はまさに世の中が求めるヒロインの象徴。守ってあげたくなるような小動物系女の子。ふわふわとした柔らかい父親譲りの金髪に母親譲りの澄んだブルーの瞳。

 小説の中では彼女のことを「天使」って表現していた。その通りだと思う。

 それに比べて私は全く正反対。私の方が年下なのに、大人っぽいし……。

 金髪は父親譲りだけど、ふわふわじゃない。光沢のあるストレート。瞳は私も母親譲り。真っ赤なルビーのような瞳。


 さらに、この世界には魔女が存在する。魔女は絶滅危惧種。

 私の母はそんな貴重な存在の魔女である。だから、私は小説の中でヒロインに最上級の嫌がらせを出来たし、それを上手く隠蔽することが出来た。

 読者からすると超鬱陶しい邪魔者。

 私の行動で不快にさせてごめんね。もう、あんなことはしないから。魔法はもっと別のことに使おう。

 嬉しいことにこの国で魔女はとても重宝される。魔女っていうと、結構嫌われたりする役が多いはずなのに、ここでは丁重に扱われる。

 なんたって絶滅危惧種だからね。脅威的存在になり得る。大切にしないと!


 コンコンッとまた誰かが扉を叩く音が聞こえる。


「医者を連れて参りました」

「どうぞ」


 メアリーの言葉に私は優しい声で答えた。

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