25.帰宅
レイは「後のことは俺に任せておけ」と言って、私に帰るように言った。彼の言葉にちゃんと従った。
ウマの場所に行くと、お腹が減っていたのかウマは少し機嫌が悪かった。ごめん、と心の中で呟きながら家まで頑張って走ってもらった。
ウマの体力って凄いよね。私だったら、お腹が減って動けないって言っちゃいそう。
家に着くと、もう夕方になっていた。地平線に太陽が沈みかけている。眩しくて思わず目を細めてしまう。
UVカットのサングラス欲しいな。……ドレスにサングラスなんて滑稽か。いや、でも逆に「エモい」とか言われないかな!?
ウマを馬小屋に連れて行きながらそんなことを考える。
後で使用人にいっぱい餌を与えてもらうからね。今日は沢山走ってくれてありがとう。
ウマは私の考えていることを読み取ったのか、嬉しそうに鳴き声を上げた。
今からの課題としては、どうやってこの屋敷に入るかなんだよね。
思ったより街に滞在しちゃったから、もうとっくに家族の皆が帰ってきているはず……。
あ~、お金も持ち出したことバレちゃってたら終わりだ、私。
今日色んなことがあり過ぎて、夢な気がしてきた。……むしろ夢だと思いたいよ。
レイに会ったことを未だに実感していない。結局、彼を笑わせる作戦は実行できなかったし。
別れ際に私のとびっきりの変顔でもしとけば良かった。惜しいことをした。
憂鬱な思いを抱えながら、屋敷の中へと入る。その瞬間、ナタリーが物凄い勢いで私の方へとやってきた。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「う、うん。どうしたの?」
ただならぬ様子を醸し出しているナタリーにそう伝えた。彼女は切羽詰まった顔を私に向ける。
「じ、実は、旦那様が……」
「父が?」
「シアラお嬢様の病気を知ってしまって」
「へ?」
ナタリーの口から予想と違う言葉を言われて思わず間抜けな声を発してしまう。
一体どこからバレたの? ……あの病気のことは医者のベンとナタリーしか知らないはずなのに。
「前にブレナン様の前で吐血なさった時です」
ナタリーはエスパーなのかな。よく私の考えていること分かったわね。
「あれだけで病気の内容まで分かるの?」
「いえ、その、ファデスとまでは分かっていないのですが」
急にナタリーの声が小さくなる。私達以外の人間に聞こえないように気を遣ってくれているのだろう。
「ただの病気ではないということは察しているようです」
「……どうしよう。誤魔化せるかな」
「ベンも私も口は堅いので私達からは決して何も言いません」
ナタリーは力強い目を私に向けてそう言った。なんて頼もしい味方なの!
今の会話だけでナタリーの好感度は爆上がりだ。私は彼らを信用して、父を騙そうと決心する。
「父に会うわ」
私の言葉にナタリーはコクッと頷く。私はマントを脱いで彼女に渡し、父の部屋へと歩き始めた。




