23.
「地図を見せてみろ」
彼の言葉に思わず首を傾げる。
「へ?」
「行きたい場所があるんだろ」
そうだけど……。まさかレイがそんなことを言ってくれるなんて思わなかった。
小説の中では彼は私に対してほとんど冷たい態度だった。なんなら、私を抹殺しようとしてたぐらいだし。
レイから私に関わるなんて到底思えない。……もしかして、何かの罠?
彼は私から腕を離し、私の手から地図を取り上げる。それと同時に、私はレイの方を振り向く。
困っている人がいたら助ける優しさを持っているのは小説を読んでいたら分かる。そんな彼は一度も笑顔を見せなかったけど、この国では人気者だった。……あ、でもヒロインだけは別格に優しくしてたんだっけ。
彼が地図を見つめている中、私はぼんやりとそんなことを考えた。
「こっちだ」
どこか複雑な表情を浮かべながらレイは歩き始めた。
突然の出来事に、一歩出遅れたが、彼の後をついて行く。
私が歩いていることに気を遣って、少し歩く速度を落としてくれたらいいのに……。
眉間に皺を寄せながら地図を見ていたけど、何か不都合なことでもあったのかな。
レイは迷うことなくスタスタと足を進める。私は必死に彼の背中を追う。
……そう言えば、彼を笑わす作戦、今実施しようかな。いや、このタイミングでするのはちょっと違うか。
「着いたぞ」
彼のその一言で私は顔を上げる。目の前にあるのは、淡い水色の壁にレモン色の屋根を持ったとんでもなく可愛い二階建ての長細い家だった。
マリドル国の街はこんな見た目が細く、奥ゆきがある家が多い。
「この家を狙っているのか?」
彼の質問に私は深く頷く。こんな立地が良くて外観も良い家はなかなかない。何としても手に入れないと。
「金は?」
「持ってきた」
「持ってるのか?」
私の言葉にレイは少し驚く。
失礼ね。……まぁ、あのルイス家に潜り込んだ時に話した内容全部聞いていたらそう思うよね。
私がお金を持っているなんてホワイト家から盗んできた以外に考えられない。
「借りてきたのよ。まぁ、許可なしだけど」
「泥棒か」
「違う! ホワイト家のお金よ。今まで何もしてくれなかったんだもの。お金ぐらい借りてもいいでしょ。後でちゃんと返すんだから」
レイの発言に少しイラついて、私は少しきつい口調で話す。私の言葉に彼は何も言わない。
「ちゃんと自分で稼いでお金を返すの。その為に、この家が必要なのよ」
「……この家、どれくらいの値段がついているのか知っているのか?」
レイが私の目を見つめながらそう言った。その言葉に私は少し固まる。
下調べを全くしてないから、この家がいくらで売り出されているのかなんて全く知らない。
私が持っているお金は家二つ分ぐらい買えるはず……。こんなにも重い金貨を家から持ち歩いているんだもの。買えなかったら困る。




