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リアムが持ってきてくれたチョコタルトは今まで人生で食べた中で一番美味しいものだった。
頬が落ちそうなぐらい美味しいとはこういうことを言うのかと実感する。口の中でチョコレートが溶けて、甘くてとろけるチョコの味が口の中で広がる。
私は一瞬でチョコタルトを胃の中に収めた。
リアムに「うまそうにくうなぁ」と何故か感心され、その後、次々と色んな種類のケーキを持ってきてくれた。
苺の乗ったショートケーキに、白桃のケーキ、大きなマスカットが沢山詰まったケーキ、モンブラン、それに濃厚なチーズケーキ。
私はペロッと全て平らげた。あまりの美味しさに全身溶けてしまいそうだ。
なんて幸せな時間! シアラ、良かったね、死ぬ前にこんなに美味しいスイーツ食べれて!
「すげえな……。これ一人で食っちまうなんて」
「そうかな? 案外余裕だったよ。それにしても、最高ッに美味しかった! ありがとう」
「いや、こっちもうまそうに食べるシアラ見れて良かったよ。貴族なのに、俺の家のケーキでこんなに満足してくれるなんて嬉しいかった」
リアムはそう言って、私に満面の笑みを向ける。
この体で初めて食べたケーキがリアムのケーキで良かったよ。世界一美味しいケーキを食べれたよ。
私は心の中でリアムに手を合わせながら感謝をする。
「……それで、お嬢様が一体街で何してたんだ?」
「ドレスを作りたくて、お店を開きたいのよね」
「は!?」
「まず場所が必要じゃない。だから、その下見って感じかな」
リアムは私の言葉にまだ理解が追い付いていないようだ。
もし、うまくドレス屋を開店することができたら、リアムのとこのケーキ屋さんと契約して、私のお店でも待っている間にケーキを出せるようにしよ! おもてなし精神!
けど、ざっくり見回った感じだと空き家なんてなさそうだし……。そもそもドレスをデザインできても作ってくれる人を探さないと。
考えれば考えるほど、やることが増えていく。
「……なんで?」
「何が?」
突然のリアムの言葉に私は思わず首を傾げる。
「どうしてドレス屋なんかしようと思ったんだ?」
「安くて可愛いドレスがあったら幸せじゃない?」
「それもそうだけど、ドレスあるじゃねえか」
私の着ているボロボロのドレスを彼は指差す。
確かにドレスはあるけど、こんなのお洒落なんて言えない。確かに平民から見たら、私のドレスはいくらボロボロといえども高級なものに見えるのかもしれないけど、流石に貴族が毛玉のついたドレスを着るのはまずい。
安価だけど、質にはこだわりたいし……。
「というか、そもそもどうしてホワイト家のお前が店なんか開くんだ?」
家庭の事情はそれぞれあったと納得しても、私は腐っても公爵令嬢だもの。本来なら絶対に店を開くなんて発想はない。前世の記憶とか思い出さない限りね。
「まぁ、興味本位? けど、私は真面目よ」
「よく分かんねえけど、ふざけていねえってことは伝わってくるよ」
「この辺りで開いている家とかない?」
「……この辺りか」
リアムは少し眉間に皺を寄せて黙って考え込んだ。




