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リアムのお店兼家へと案内してもらった。赤色の屋根が特徴的な可愛らしい二階建ての家だ。
一階は全てケーキ屋さんとなっていて、かなり繁盛しているように思えた。ちゃんとカフェみたいになっていて、ケーキを食べて休憩できるようなスペースもある。
……うわぁ、女子高校生が好きそうなお店。絶対、SNS映えするって言ってテレビとかで取り上げられる。
リアムがお店に戻ってくるなり、客達が口々に言葉を発する。
「どこ行ってたんだい?」
「さぼりか~?」
「リアムお兄ちゃん、ようやく戻って来た!」
「ちゃんと手伝いしなさいよ。リアムのケーキは絶品なんだから」
なんか、リアム、人気ね。私とは大違いじゃん!
街だと交流が多いから、皆顔馴染みになるのかな。いや、貴族も交流はあるはず! ただ私がそういう交流の場に出ていないだけ。
老若男女問わず、色々なお客様がいる。街の人から愛されているケーキ屋だということが一瞬で分かる。
……それにしてもなんて良い匂いなのかしら。こんなのお腹が減っていなくてもお腹が減る。
まともな食事なんてこの頃食べていなかったから、余計に私の細胞がこの香りのものを求めている。
ケーキ屋の奥にいるリアムの両親だと思われる人たちはとても優しそうな顔で微笑んでいる。
少し嫉妬しちゃう。こんなに良い家庭環境なんて……。私もこの家に養子にこようかしら。
「俺にもたまには休みをくれ!」
リアムはそう言って、私の手を握り、強引に引っ張る。私はなされるがままに彼について行く。
二階へと上がり、リアムの部屋だと思われるところへと入る。
貴族の令嬢が平民の男性の部屋に入ったって、大丈夫だっけ? ……きっと大丈夫じゃない。
でも、今はそんなこと考えなくて、ただ彼との会話を楽しまないと!
友達誰一人いなかったシアラに唯一出来るかもしれない友達なんだから。
「マント脱ぐか?」
私は少し戸惑ったが、彼の言葉に従った。私がマントを取り、彼に渡そうとした瞬間、彼が固まったまま目を見開いて私を見つめていることに気付いた。
……何? なんか顔についてた!?
もしかして、ウマの毛が大量について髭が出来ているとか?
私は思わず口の周りを触る。
なにも無いじゃない。一体何に驚いているのよ。
「どうかした?」
私が小さく首を傾げる。それと同時に後ろにまとめていた髪の毛がサラッと前に流れてくる。
「いや、その……」
リアムは急に顔を真っ赤にして、手で顔を覆う。彼は急におどおどし始めた。
もしかして、私に見惚れていたの?
まぁ、分かる。シアラみたいな美少女なんてその辺に転がっていないもんね。
「こんなに綺麗だとは思わなかった」
リアム! あんた良い奴だよ!
私は心の中でそう叫ぶ。今まで家族の誰一人としてそんなことを言ってくれた人間はいなかった。
「もう、私達マブダチ!」
「は? なんだ、その、まぶだちって」
急にリアムは怪訝な表情を浮かべる。……さっきまでの照れた様子はどこに行ったの。
「ん~、仲の良い友達って感じの意味だけど、私達ってまだ知り合いだよね」
「いや、俺の家のケーキ食べたらもう友達だ」
「今すぐ食べます」
「了解しました、お嬢様」
リアムは嬉しそうにニカッと笑い、部屋を出て行った。




