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死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
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18.街の少年

 街はとても活気に溢れていて、今まで見たことのない景色が広がっていた。

 前世の街の風景とは全く違う。暖色の屋根のあるヨーロッパで見られるような建物。

 より賑やかな方へと足を進めると、店がずらりと並んでいる。花屋や果物屋に服屋。沢山の人がわちゃわちゃと楽しそうにお喋りをしている。


 私が数日間の間に身に着けた情報だとここはマリドル市場というそうだ。名前の由来はいたってシンプル。

 この国の名前がマリドルだからだ。この国の一番大きい市場がこのマリドル市場。

 適当に名前つけたのかよって思うのかもしれないけど、色々な名前をつけられると覚えるのが大変だから、そのまま国の名前を引用した方が分かりやすい。

 天使の彫刻がある大きな噴水のところまで来てしまった。

 子どもたちがそこで楽しそうに声を上げてはしゃいでいる。男女関係なく、水の掛け合いをしている。


「楽しそう」

「じゃあ、混ざるか?」


 突然私の後ろで男性の声が聞こえた。私は咄嗟に振り向き、声の主を確認する。

 背の高い赤毛の好青年と思われる人物が立っていた。少し薄汚れたオーバーオールを着ていて、ここの住民だということはすぐに分かる。


「私が混ざっても嫌がられそうだし、やめとくわ」


 街では出来る限り人に関わらない方がいい。ホワイト家の名誉のため…………って思ったけど、もう私はホワイト家なんてどうでもいいんだった!

 というか、父曰く、私はホワイト家の令嬢じゃないから、何をしてもホワイト家は無関係ってことで大丈夫よね。

 そう考えたら一気に自由になれた気分!


「何ニヤニヤしているんだ?」


 赤毛の少年は私を少し訝し気に見る。フードで顔を隠しているのに、よく口元だけ分かったわね。

 その観察力を褒めていいのか、貶していいのか分からない。


「お前、金持ってるだろ?」

「どうして?」

「そのマントとか高級そうだし、お前みたいな女見たことねもん」

「初対面なのにお前お前って……私はどこまでもそんな運命なのね」

「何一人で喋ってんだ?」


 私が一人で悲しみに暮れている演技をしているのに、彼は怪訝な表情を浮かべる。


「俺の名前は、リアム。リアム・カーターだ。俺の家はそこのケーキ屋。これでも俺、かなりお菓子

作り上手いんだぜ」


 自信ありげに彼は自己紹介する。いきなり自己紹介でお菓子作りが上手いって伝えられてもね……。

 確かに彼からはずっと甘い匂いがしていた。そのオーバーオールの汚れって、どっからどう見てもフルーツと生クリームだ。

 その匂いは私の食欲を刺激させた。シアラはスイーツなんて食べたことがない。


「私の名前はシアラ」


 これ以上何も言えない。

 ホワイト家っ言って、距離を置かれるのもなんか嫌だし、私がやってきたことなんて嫌がらせぐらいしかない。


「苗字は? 言いたくないのか?」

「うん」

「よし! 言え!」


 え、と私は固まる。

 そこは「言いたくないなら言わなくてもいいよ」って気を遣うところじゃないの!?

 なんで無理やり言わそうとしてくるのよ。

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