17.
「もしかして、ブレナンに似た違う人とかでもないんだよね?」
私の言葉にナタリーはコクッと頷く。
一体どうしてブレナンが私に新しいドレスなんてプレゼントするの?
私とエミリーを勘違いしたってわけでもなさそうだし。 ……もしかして、この前私が言っていたこと気にしていたのかな。
手の上にあるドレスに目を落とす。こんな立派なドレスを家族から渡されるなんて初めてじゃないかしら。
高価な物を貰っておいて、こんなことを言うのもなんだけど、少し気味悪い。
今日はこの世界では「姉の日」とか? それでも、ブレナンが私に何か贈り物するはずがない。
「そんなに疑わなくても、きっとブレナン様も心を入れ替えたのだと思います」
いや、心を入れ替えたのは私の方だと思う。
シアラは家族に歩み寄ることはしなかった。嫌がらせで彼らから注目を浴びているだけだった。
私が死ぬことは避けられないけど、もしかしたらシナリオを変えることが出来るかもしれない。
ナタリーにドレスを部屋に置いておくよう言って、私は屋敷を出た。
馬小屋の近くに行った瞬間、ウマが私の方へと駆け寄ってくる。周りにいた使用人たちが後退る。
私も彼の迫力に少し驚いたまま、近づいてきたウマをそっと撫でる。柔らかい毛並み。
「君はカッコいい馬だね」
私がそう言うと、心なしかウマが喜んだ表情を浮かべた気がした。私はそのまま彼の上に乗り、手綱を握る。
使用人たちは私の奇行に触れたくないのか、何も言わない。
私は街への道をもう一度頭の中で思い出す。
部屋に地図を持ち込んでこの数日間頑張って、街全体の道を頭に詰め込んだのよ。大丈夫よ、シアラ。自分を信じて。
私は自分にそう言い聞かせて、ウマを走らせる。
ガタガタ揺れてお尻が痛かったけれど、もうこの痛みも慣れてくる。……まだウマに乗るのは二回目だけど。
街から少し離れた場所にあるところでウマから降りる。立派な大きな木の下でウマを少しの間待たせておく。ここは陰になっているから、涼しいだろう。
「ここで待っていて。知らない人について行っちゃだめだからね」
私がそう言うと、ウマは頷くような素振りを見せる。……本当に私の言っていることが分かっているのが凄いわよね。
私はウマを少し撫でると、その場を後にした。
一応ホワイト家の令嬢だとバレない為にマントの後ろについているフードを被る。
これだとただの怪しい人になるような気もするけど、まぁいっか!
初めての街だから、思いっきり楽しまないと。ちゃんと、家からお金も持ってきたし、準備万端!
勿論、このお金は家にあったやつをこっそり持ってきた。盗んでないよ、いつか返す。私が稼いだ後になるだろうけど。
そもそも、私はいままで贅沢してこなかったのだから、これぐらいの贅沢しても構わなくない?
そんなことを思いながら、足を進めた。




