16.外出
屋敷に家族の誰もいないのを確認してから、私は部屋を出る。皆、エミリーの婚約祝いでルイス家、つまり王宮に行っている。
あれから、父はセルドアや国王と気まずくならなかったのかしら……。
王家に一番信頼されているホワイト家が没落する可能性もある。けど、セオドアとエミリーの婚約は破棄されていないから、まだ続いているのだろう。
まぁ、正直今は彼らに構っている暇なんてない! だって今日はスペシャルデー!
今日の為に数日間も作戦を練ったのだから、絶対にこの屋敷を脱出するのに成功するはず。
シアラは今日初めて街に出るのよ!
そう思ったら、本当に窮屈な生活しか送っていなかったのね。家族がお出かけでもいつも私だけが仲間外れなんだもの。
「お嬢様!」
廊下を歩いていると、少し急いだ様子でナタリーが私のところへ駆け寄ってくる。
別に外出は使用人にバレてもそこまで困らない。だって、今はこの屋敷の中で一番偉いのは私だから。誰も私が街へ行くことを禁止なんて出来ない。
「どうしたの?」
「そ、それが、これを……」
そう言って、ナタリーは大きい長方形の箱を私に渡す。
「私に?」
ナタリーはコクりと頷く。
一体誰が? 私に贈り物なんて信じられない。……嫌がらせとか!?
私はおそるおそる箱を開ける。
「わお!」
思わず令嬢らしくない驚き方をしてしまう。
けど、それも仕方ない。なんたって、箱の中身は私が待ち望んでいた新しいドレスだったのだから。けど、こんな薄ピンク色のドレスはエミリーに似合いそうだ。
私はドレスをそっと触る。……なんて素晴らしい肌触り! それによく凝って作られている。上質な素材を使用されているのだとすぐに分かる。
きっと物凄く高価なものだろう。私がいまから安く質の良いドレスを作ろうとしているのに……。
「ブレナンお坊ちゃま、じゃなくてブレナン様からです」
あ、お坊ちゃまって言うのやめさせたんだ。確かにブレナンもそんな歳じゃないもんね。
………………え!?
「ブレナン!? え、どこのブレナン? サンタクロースの名前ってブレナンだったっけ?」
「えっと、ホワイト家のブレナン様です」
ナタリーは少し困惑した表情で答える。
嘘でしょ。ブレナンが私にドレス?
ウマに蹴られて頭のネジが飛んでいったわけとかじゃないよね。……信じられない。彼が私にそんなことするわけない。
「本当にブレナンからなの? なにかの間違いとかじゃなくて?」
「本当にブレナン様です。今日出かける前にこれをシアラ様に渡して欲しいと言われて……」
「え、信じられる?」
私は思わず、ナタリーにそう聞いてしまった。ナタリーは少し戸惑ったが、すぐに真剣な表情で「実は私も信じられません」と言った。
もう、シアラに対する恐怖心や警戒心がなくなったようだ。




