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死ぬ前に君の笑顔が見たい  作者: 大木戸いずみ
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11.ルイス家

 突然、ウマが足を止める。その反動で私は思い切り前のめりになる。

 手綱をしっかり握りしめていなかったら、私は空を飛んで転落していただろう。

 けど、初めての割にはかなり上手い乗馬だったと思う。私じゃなくて、シアラ自体の運動神経がとんでもなく良かったのかもしれない。

 私はあたりを見渡す。


「……それでウマ、ここはどこ?」

 

 正式にルイス家の屋敷を案内されていないんだけど、大丈夫かな……。

 捕まって、牢屋に入れられるとかないよね? 

 後二年の命なのに、ずっと牢屋暮らしなんて嫌だ。もし捕まったとしても、私の家族は誰一人私を助けることなんてないだろう。


「エミリーに大事な話があるんだ」


 突然、上から聞いたことのある低い声が聞こえた。久しぶりに聞いた父の声だ。

 ……ん? 大事な話? 

 私は耳を澄ませて会話に集中する。


「何か悪いお話でしょうか?」


 柔らかで可愛らしい声。エミリ―だ。……もしかして、この話しって婚約?!

 ナイスタイミング過ぎて、私は心の中で歓喜の声を上げる。

 センキューウマ!!!

 ウマが私の言葉を理解してここまで連れて来てくれたってことを考えると、感謝せずにはいられない。

 私はウマの頭に熱いキスをする。


「くさっ」


 家帰ったらシャワー浴びようね。

 私はそんな思いで馬を撫でて、そのまま下りる。ウマは私の言葉に傷ついたのか、少し落ち込んでいるように思えた。

 折角ここまで連れ来てくれたのに、酷いこと言ってごめんね。けど、今は上の階で最高に良いシーンが始まるところだからちょっと待ってて。


「とても良い話だよ、エミリー」


 父~、私にはそんな甘い声で話してくれたことないじゃない。

 てか、もうすぐエミリーに婚約を伝える場面だ。この場面を逃すわけにはいかない!

 私は近くにあった木に何の躊躇いもなく足を掛ける。

 どうせこのドレスは安物だし、かなり着込んでいるから、これ以上ボロボロになっても悲しいの「か」の字もない。

 シアラ、体軽すぎない? すいすい登れるんだけど……。前世の私が体重重すぎたのか?


「君は美しく聡明なレディだ」


 この落ち着いて澄んだ声は、国王の声かな? 


「やばい、もう始まってるじゃん」


 私は木を上るスピードを上げる。本当にシアラは病気持ちの体なのか疑いたくなる。

 勝手に声は二階からだと思っていたけど、三階もあったとは……。

 頭に枝が刺さる。そんなことなんて気にせず私はただ声のする場所へと突っ切って登っていく。

 エミリーのふわふわとした髪の毛が視界に入ってくる。


「あたま発見! 後、少し!」


 自分を鼓舞させて最後の枝に手を伸ばす。私はシアラの細い腕に全体重をかけてなんとか体を上へと上げる。

 その瞬間、窓から全体の様子が見えた。

 エミリーに父、そして国王とその息子のセオドア。セオドアの容姿は全て父親譲りだ。髪は燃えているような真っ赤な髪に、瞳は優しい深緑色。

 私は「リンゴ色だなぁ」と小さく声を発する。

 窓は開いているけど、私の声は聞こえていない。外には猿みたいな女がいるというのに、彼らは全く気付かない。

 なんとも不思議な空間……。

 彼らをじっと眺め、中の様子を観察し続けた。

 それにしても……、顔面が脅威。美男美女しかいなくて近寄れない。

 もちろん、シアラも負けていない!

 けど、美形の人間は一人ぐらいでいい。何人もいると胸やけする。

 ここにいる人たち全員、前世で地球に飛んでくる隕石でも止めた? 

 顔面偏差値が高すぎて、折角のシアラの美貌の価値も下がってしまう。

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