10.
道はいたって単純だった。ほぼ真っ直ぐ。ただその真っ直ぐがとんでもなく長い。
私の家族はお喋りだから本題まで随分と時間がかかるはず。婚約の話なんて冒頭でしちゃえばいいと思うのだけど、王家との婚約となれば色々と順序を踏まないといけないらしい。
物凄いスピードで走るウマ。落ちないように必死に手綱を握る。風で髪の毛が台風のように荒れていて、前があんまり見えない。
……危ないよね、これ。この世界で乗馬免許なんてあったら一瞬で剥奪される。
高速道路のスピードを生身で感じている気分。もし、落馬なんてしたら即死だ。
「あ、そこ右~!」
私は叫びながら馬を操作する。ウマは私の指示に従い、勢いよく右に曲がる。
遠心力で飛ばされそうになる。絶対手綱を離さない!
今、見事なイナバウアーしたんだけど、誰か見てなかったのが残念。私、本当に二年後に死ぬの?
「てか、こんなボロボロの格好でお屋敷に入れてもらえるのかな」
ウマは私の呟きに答えるように「ヒヒ―ン」と鳴き声を上げる。
きっと「大丈夫だよ」って意味だよね!
私は気合を入れなおして、髪の毛が乱れに乱れた爆発頭のままスピードを上げた。
段々ルイス家のお屋敷だろうと思われるものが見えてきた。
……こんなに遠くからでも分かるなんて大きすぎない? やっぱり王家は格が違う。
「あの家一体いくらかかってるんだろう」
この国は領土は広いから、地価は安くてもあんなに大きくて豪華な造りだから、とんでもない高さよね。宝くじの一等が当たっても買えないだろう。
ルイス家の屋敷を値踏みしている間に、いつの間にか門の前までついてしまった。
門の前にいる衛兵達が私を不思議そうに見つめている。私は思い切り、ぼさぼさの髪の毛を後ろにかき上げて顔を見せる。
「シアラ・ホワイトです。通してもらえますか?」
私の悪名が有名だったのか、衛兵の一人が「はっ!」と力強く声を発する。
それと同時にゴリラを対象に作られたのかって思うぐらいの大きな門が開かれる。
「お父様達はどこにいると思う?」
私はウマに話しかける。すると、ウマは突然前足を上げて、私が一息つく間もなく走り始めた。
「今度は何!?」
私の叫び声を無視して、ウマはひたすら走り続ける。ルイス家に仕えている者達も私達に驚く。一気に注目の的になる。
挨拶しないのも失礼だから、私は結構なスピードで馬に乗りながら適当に会釈をしておく。
ブラックリストに登録されませんように! これで出禁になったらウマ恨むからね!
「お花は踏んじゃダメだよ!」
私の声をちゃんと聞いているのか、ウマは綺麗に整えられた花壇を見事に避けて進んで行く。
意思疎通出来ているのか、出来ていないのかよく分からない。
ウマは私を理解出来ても私はウマを理解出来ていないし……。まぁ、ウマが私の言葉に忠実に従ってくれているだけ有難いと思っておこう。




