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おねぇ相談室

作者: 甘夢

「おねぇ」というテーマを見つけてピンと来ましたので書いてみました。

「ひっぐ……うぅ……」


 その日、一人の少女が路地裏で蹲っていた。

 薄汚れた白いTシャツに、ボサボサの長い茶髪、穴が開いた黄色のスニーカーという外見で、結構の人混みでも構わず泣き続けている。

 通行人のほとんどは少女を怪訝そうに見やり、救いの手を差し伸べず先を急ぐ。心配そうな視線を寄越す者もいるが、周囲からの視線で彼らもまた少女を助けようとしない。

 それは朝方から現在、夕方まで継続して振り続ける雨のせいでもあった。

 だからこそ、道行く通行人は保身だけ考えて建物の中に逃げ込み、少女を助けようとはしないのだろう。

 少女もそのことは身に染みて分かっていた。

 けれど消えることのない悲しみのせいで、泣き続けるしかなかった……そんな時。


「――可愛いお嬢さん、少しあたしと話さない?」


 少女の全身に影が落ちた。

 慌てて少女が顔を上げてみると、全身黒ずくめで髪の長い男の人が頭上に傘を差してくれていた。

 少女は一瞬だけ狼狽えたものの、素直に男性の後についていくことにした。


「――にしても、酷い奴らねぇ」


 案内された店の中で、少女は男性に事情を説明した。自分が小学生で、親から日常的に放っておかれていることを頑張って話した。

 すると男性は我が事のように怒ってくれて、味方になってくれた。


「ようやく見つけたぜぇ? 狭間の嬢ちゃんよぉ!」


 それは、蹴倒す勢いで店の扉が乱暴に音を立てて開いた時にも変わることはなかった。

 頭に立派な尖った髪を蓄え、頬に傷の跡が残ったヤクザは、店の中に入ってくるや否や真っ先に少女の元に向かってきた。

 乱暴に腕を引っ張ろうとするヤクザだったが、その動きが中途半端な体制で止まる。

 視線の先には笑顔の男性がいる。笑顔なのだが、それがヤクザには「脅威」だと感じられたのだろう。


「も、申し訳ございませんでしたぁっ!」


 すぐさま床に頭を垂れ、平伏してしまった。

 追い打ちをかけるように男性が笑顔のままヤクザを更衣室の中まで連行していき、何か断末魔のようなものが聞こえたと思えば、ヤクザの頭のとんがりはすっかり消えていた。


 ――それが、少女と、おねぇ店主との奇妙な関係の始まりだった。

 しかし、この事件がきっかけで美玲が霧山に憧れ、近い将来彼の相棒となったのは、また別の話だ。

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