ep11 - 凡骨ナイトがお金を持ってても強くなれない理不尽な世界!
それから、まだまだエリザから色々と説明をされた。されたけど、正直言って金貨にだけ目がくらんでしまって、あまりちゃんと聞かなかった。
うろ覚えなのが、ソフィアはエリザの母方の従姉妹らしい。そして、彼女の両親はもう亡くなっている。それ以来はエリザが面倒を見ていたけど、ある日運悪くフェルンブラスに目を付けられてしまった。
まさか、この地方を支配するフェルンブラスとやらがギタノと同様にロリコンだったとは結構ショックを受けた……。
エリザは聖女騎士団と共にソフィアを保護してきたけど、それがフェルンブラスに見透かされて色々と手を打ってきたらしい。迷宮に閉じ込められるとか、色々あって今に去るということだ。それで、ソフィアを含めた全員が話し合った結果、これ以上このまま保護し続けたらいつかは捕らわれてしまう。
ちなみに、聖女騎士団とはエリザが入っているギルドの名らしい。自分達で聖女を名乗るとか色々と突っ込みたかったけど、全員が美少女らしいから良きとしておいた……。
ソフィアを保護するとは言っても、俺達と一緒に居るなんて誰にも見当が付けれないし、一緒に行動させてほしいだけだそうだ。
絶対に彼女を一人にしないことだけを守れば大丈夫だそうだ。フェルンブラスの部下が見てもバレない程度に変装をしていて、実は彼女もエリザと同様に茶髪で銀髪ではない。ただ、フェルンブラス自身に目撃されたら、バレなくてもまた目を付けられるかもしれないので、それだけは絶対に避けなければならない。
後は、何かがあったらすぐにエリザに連絡すること。
エリザといつでも連絡取れることが可能になって、ギタノが内心ものすごく喜んでいたのが窺えた。
こいつ、これが真の目的だったのか……。
真面目そうでとんでもないことを考える奴だ……。
最後に、西の戦争が最も危険だから近づいてはいけないとか、エリザも西へ手伝いに行くので数日は戻って来れないとか、それ以外に色々と説明されたはずだ。はずだけど、これから何をしようとか、何を買おうとか、どんな武器を身に付こうとか、そもそも、どんな物が買えるのか、俺の集中はもっと大事な話題で盛り上がっていたので、ほとんどの説明があやふやでうろ覚え状態だ。
まぁ、要するにお金だ。この世はお金だ。お金があれば何でもできるし、何でも手に入れる。そんな世の中に、俺達はお金持ちになってしまったのだ。
一億リア。
一生食いながら暮らしても余る金額だ。
「これで振込手続きは完了よ。明日から自由に使えるようになっているわ。三人ともが取引できる形にしてあるけど、ちゃんとみんなで相談してから使うことね」
金貨の様々な取引を営んでいる金融機関の大きな建物を出て、街路を進みながらエリザが説明の続きをしていた。
俺達がさっきまでいた施設は、金貨の預け入れ、引き出し、振り込み等などの取引を行っている。
非常に便利なサービスだ。
「俺達はソフィアを保護しながら普通に暮らせばいいだけなんだな?」
フードをきっちりと被っているソフィアの頭に手を置きながらエリザに再確認をした。彼女は俺を見上げて心底嫌そうな表情を浮かべて見せる。
大丈夫大丈夫。一億リアの身柄だ。
これくらいなんともない。
「ええ。そうよ。まぁ、ソフィアは中々腕の立つアーチャーだから、腕を磨くために狩りに行ってもいい、わよ……?た、ただ、君たちドジすぎるのであまり危険なモンスターには挑まない、でね……?命を大切に、ね……?」
自分で提案したのにも関わらず、なぜかすぐに心配そうになったエリザ。
「大丈夫だ。お金があれば俺達でもマシになるってもんだぜ」
俺は……マジで噛まれそうな状態なので、小さく唸り始めたソフィアの頭から手を素早く放しながら言った。
お金があれば立派な装備が揃えられる。それで怖いもんなしだぜ。
しかし、俺の考えていたことを悟ったエリザは、
「立派な装備を買いそろえても君たちでは使えないよ?常識だから知っていると思うけど……全ての装備はモンスター材料から鍛造されていて、その装備を扱う者が元の材料となっているモンスターを討伐出来ないと使えないわよ?」
と、そんなことも知らなかったの?的に眉を上げて淡々と確認してきた。
「え?そんな……」
そう言えば……そんなことをナイトの神様から聞いた覚えが……。
「大馬鹿です……」
そして……エリザと手を繋いでいるソフィアが、俺達と会ってから初めて発言した言葉がそれだった。