5話 トラベラーディナー
ちょっと今アトランティス攻略で時間取れないので
1000字くらいです
宝石の換金が済み、クインヘルの腰の巾着には宝石とは別の重みが加わった。
彼女の旅費は彼女自身に出してもらい、エンカとシンレスは今まで通り国王からの旅費で足を進めていく━━
初めは気が進まないシンレスだったが、予想外のいいことがあった。
エンカが勝手にいなくならないのだ。自分が目を離しても、クインヘルが手綱を握っているので、エンカの放浪癖も影を潜めているようであった。
それに、元々面倒見のいい性格なのか、クインヘルはエンカの護衛を真面目に続けている……というより世話を焼いている。
刺客という前科は消えないし当然警戒も続けているが、彼女の存在には感謝するほかなかった。
3人は足並み揃えて歩き、周囲に目を光らせ、腹が減れば一緒に食事をし、時に他愛ない会話をしながら、未だ遠い隣国へ向かっていく。
……そしてこの日も、太陽が落ちて徐々に暗くなっていく町並みが1日の終わりを知らせてくる。
完全に暗くならない内に、3人は宿屋を探し体を休めることにした。
いくつか訪ね、まだ部屋が空いているという宿屋を見つけた。
護衛の任もあるのでエンカとシンレスは同室として、女性のクインヘルは別室の方がいいだろうと2部屋とる。
結果、高くつくのは料金だ。
節約は常にしておきたいシンレスは、店主と値切り交渉を始めた。
シンレスの交渉とエンカのおねだりでも動かなかった店主だが、クインヘルが出て話をするとたちまち交渉が成立した。
曰く、『美とはこう使うもの』……この時の女性は何だか心強かった。
3人はそれぞれ部屋に入り、腰を下ろす。この宿屋で食事は提供されないそうなので、しばらくの休憩のあと夕食探しに再び町へ繰り出す事となった。
休憩後、クインヘルが2人の部屋を訪れ、3人揃って一旦宿屋を出る。エンカは宿屋近くの大衆食堂を覗き込み、入れそうだと2人を手招きして入店した。
忙しなく働く従業員を呼び止め料理を注文し、その数分後、オーダーしたものがどんどんテーブルに置かれていく。
エンカとシンレスは男性らしくよく食べるが、クインヘルもなかなかの健啖ぶりを周りに見せつけていた。
「シンレス、お酒は?」
「今は任務中だ。禁酒だ禁酒…………よし、食い終わったな。表へ出ろクインヘル」
食事を終えたシンレスは口元を拭きながら、これから稽古をつける、と颯爽と席を立った。
「わ……分かった」
「オレはもうちょっと休んでから行くよー」
満腹で動く気がないエンカはのんきに2人へ手を振る。
クインヘルは少し緊張した面持ちでシンレスの後を追った。