37話 策略の夜 ~1~
長くなりそうなので分割します
後半は手直し終わり次第更新します
ルリカは1人、街中を歩いていた。
街は相変わらず活気づいていて、歩くだけでも気分を高揚させてくれる。
しかし、ルリカの表情は暗く沈んでいた。
━━最近、落ち込む出来事が多い。
シンレスはあれから帰宅がますます遅くなり、クインヘルからは国に戻るからもう会えないと言われてしまったのである。
せっかく出来た友達だったのに……あっという間の別れを目の当たりにし、しばらく外に出るのが億劫になっていた。
今日だって、本当は外出する気力はなかった。
しかし、生きている以上、日々の糧の補給は欠かせない。仕方なく、籐かごを持って買い出しに出かける事となったのである。
足取りは重く、とぼとぼと歩みを進めていく。
その先で、ルリカはまず精肉店に足を止めた。
体を屈めて、店先に並べられた、ケースに入った精肉をじっと見つめる。
旨味があり食べごたえのある牛肉か、疲労回復によい豚肉か、消化のいい鶏肉か……とても悩んだ。
……というのも最近、シンレスがやたら怪我をして帰ってくるのだ。
怪我自体は昔からあった。問題はその【質】である。
いつもは掠り傷程度なのに、最近は傷口が大きい。深く抉られたのか縫合を受けていた時もあった。
事情を聞くも、彼は大したことないと笑って誤魔化してしまう。
心配させまいとする彼の配慮だろうが、隠されると余計心配になる。よって、栄養や体調に気を遣う日が増えたのである。
しばらく悩んだ末にいくつか選び、経木に包んでもらい、籐かごに入れてもらった。
それから青果店にも行って、数日分の野菜や果物も購入する。
これでひとまず目的は果たしたので、ルリカはすっかり重くなったかごを持ち直して帰路に着いた。
その途中で。
「もし。そこの美しいお嬢さん」
背後から、声が聞こえてきた。
一瞬、誰の事なのか分からず周囲をキョロキョロと見回してしまったが、声の主はまっすぐルリカを見ていた。
見知らぬ人……シンレスと同じ、黒い髪の青年だった。
「何か、ご用でしょうか……」
少し警戒しておずおずと聞くと、彼の目元と口元が困ったような笑みを形作った。
「はい。少し道を訪ねたくて」
頭を掻きながらルリカへ近付いていく青年。
逆の手には、小さな紙を持っている。
ルリカの髪色と同じ、赤い瞳。
……何故か歪な、血溜まりに見えた。
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