表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不老でゆるりな国の命は、出先で隣国王女を娶って国に持ち帰る  作者: 鞘町
3章 彼方への愛は言うに及ばず
38/51

37話 策略の夜 ~1~


長くなりそうなので分割します

後半は手直し終わり次第更新します



 ルリカは1人、街中を歩いていた。


 街は相変わらず活気づいていて、歩くだけでも気分を高揚させてくれる。

 しかし、ルリカの表情は暗く沈んでいた。




 ━━最近、落ち込む出来事が多い。

 シンレスはあれから帰宅がますます遅くなり、クインヘルからは国に戻るからもう会えないと言われてしまったのである。


 せっかく出来た友達だったのに……あっという間の別れを目の当たりにし、しばらく外に出るのが億劫になっていた。


 今日だって、本当は外出する気力はなかった。

 しかし、生きている以上、日々の(かて)の補給は欠かせない。仕方なく、(とう)かごを持って買い出しに出かける事となったのである。


 足取りは重く、とぼとぼと歩みを進めていく。





 その先で、ルリカはまず精肉店に足を止めた。


 体を(かが)めて、店先に並べられた、ケースに入った精肉をじっと見つめる。

 旨味があり食べごたえのある牛肉か、疲労回復によい豚肉か、消化のいい鶏肉か……とても悩んだ。




 ……というのも最近、シンレスがやたら怪我をして帰ってくるのだ。


 怪我自体は昔からあった。問題はその【質】である。

 いつもは掠り傷程度なのに、最近は傷口が大きい。深く抉られたのか縫合(ほうごう)を受けていた時もあった。


 事情を聞くも、彼は大したことないと笑って誤魔化してしまう。

 心配させまいとする彼の配慮だろうが、隠されると余計心配になる。よって、栄養や体調に気を遣う日が増えたのである。





 しばらく悩んだ末にいくつか選び、経木(きょうぎ)に包んでもらい、(とう)かごに入れてもらった。


 それから青果店にも行って、数日分の野菜や果物も購入する。




 これでひとまず目的は果たしたので、ルリカはすっかり重くなったかごを持ち直して帰路に着いた。


 その途中で。







「もし。そこの美しいお嬢さん」


 背後から、声が聞こえてきた。

 一瞬、誰の事なのか分からず周囲をキョロキョロと見回してしまったが、声の主はまっすぐルリカを見ていた。


 見知らぬ人……シンレスと同じ、黒い髪の青年だった。


「何か、ご用でしょうか……」


 少し警戒しておずおずと聞くと、彼の目元と口元が困ったような笑みを形作った。


「はい。少し道を訪ねたくて」


 頭を掻きながらルリカへ近付いていく青年。

 逆の手には、小さな紙を持っている。






 ルリカの髪色と同じ、赤い瞳。

 ……何故か(いびつ)な、血溜まりに見えた。




誤字報告、評価等は

下からお願いします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ