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第五話

第五話です。

本日、二話目の更新なので前話を見ていない方はまずはそちらをー。

第五話


 やることは単純だ。

 スライムを追い払えば、それでいい。

 最初の一歩を全力で踏み込む。

 まずは、それからだ。


「スゥー」


 体に力が漲る。

 今まで、僕の身体に欠けていたものががっつりと嵌まったような感覚。

 暗闇の中ですら鮮明になった視界の真ん中にいる、スライムを見定める。


「……カイト? カイト、聞こえているか?」

「大丈夫、行ける」

「待て、何かがおかし――」


 足に力を籠め、そのまま全力で前へと飛び出す。

 驚かせるために拳を掲げようと構えたその瞬間―――既に僕の眼前には壁が迫っていた。


「カイト! 止まれ!!」


 シフの声に我に返るが、既に突き出した拳は壁に叩きつけられる。

 拳が砕ける音が返ってくる―――と思いきや、拳から返ってきたのは、石で作られた壁を拳が粉砕する音であった。


「なっ……!?」

「「ピギィ!?」」


 肘ほどまで突き刺さった拳を見て、足元にいたスライムは驚きと恐怖に体を震わせ、床を跳ねながら逃げていく。

 唯一、銀色のスライムだけが動かずにいるが、今はそんなことはどうでもいい。

 無理やり、壁から右腕を引き抜きながら、無傷の拳を見る。


「これが支援魔術……!? すごいな、シフ!」

「……」

「シフ?」


 驚きに目を丸くしているシフに声をかけるも、反応が返ってこない。

 そのまま数秒ほどして、ようやく動き出した彼だが、思い悩んだ表情は変わらない。


「今のは、私が想定した支援魔術ではない。カイト、おぬしの魔力は……あまりにも強力すぎる」

「へ?」


 思わず呆気に取られた反応を返してしまうが、どうやら本来の肉体強化は今ほどの強さはないようだ。


「おぬし自身の体質……いや、魔力か。それらと私の魔術の親和性が高すぎるのも相まって、肉体強化の効果が倍以上にまで引き上げられてしまっているのだ」

「……つまり?」

「おぬし以外に支援魔術を使った場合はある程度の効果は得られるが、お主自身に使えばその効果は計り知れないものになる。それこそ、肉体の限界を超越させるほどにな」


 それって、使い魔じゃなくて僕が戦った方がいい的なアレ……?

 いや待て、それってテイマーとしていいのか!?

 僕としても使い魔を従えて、かっこうよく指示を出して戦うっていう未来を想像していたのだけど!?


「私も困惑しているのだ。まさか、こんなことになるなんて……いや、ここは流石は我が主というべきか?」


 シフも困惑しているのか、前足で器用に頭を抱えている。

 主従でその場で悩んでいると、さっきから僕の足元にいた銀色のスライム、ミスリルスライムが変わらず光沢のある表面で僕を見上げていることに気付いた。

 全然、逃げる様子を見せないので、とりあえずしゃがんで見下ろしてみる。


「もう君をいじめるスライムは逃げていったよ。さ、君も早く帰りな」

「キュー!」


 勢いよく首を横に振る動作を見せるミスリルスライム。

 え? なに? なんなの?

 必死にコミュニケーションを取ろうとするミスリルスライムに、ふむふむと頷いたシフは、内容を通訳してくれる。


「どうやら、お主についていきたいようだ」

「そうなの? でも、使い魔にするにもコボルドが……」

「そうなのだがな。むしろ、今のカイトの力を考えると……ふむ」


 ミスリルスライムを一瞥し、シフは僕を見上げる。


「作戦を変えて、こいつを使い魔にする」

「僕は構わないけど、いいの?」

「ああ。今のを見て、支援魔術により強化されたコボルドよりおぬしの方が強いことが分かったからな。戦力増強という意味でなら、ミスリルスライムの方が適任だ。いざという時の盾にもなるからな」

「……分かった」


 シフに爪で手の甲を軽く切ってもらい、彼の時と同じようにミスリルスライムと契約をする。

 魔力の繋がりができたことを確認すると、嬉しそうに跳ねたミスリルスライムが、シフとは逆の僕の肩にのぼってきた。


「……意外と軽いな。ミスリルっていうからもっと重いものだと思ってた」

「あくまで特性だけだからな。重さ自体は普通のスライムとは変わらない。それより、名前をつけてやったらどうだ?」

「名前?」

「うむ、名前をつけてもらえると嬉しいからな」

「きゅ!」


 シフの言葉にミスリルスライムが頷く。

 名前……名前かぁ。

 

「ライム、とかどうだ? ちょっと安直かもしれないけど」

「キュ! キュー!」


 嬉しそうに肩で跳ねるミスリルスライム、改めライム。


「気に入ってくれたようだな」

「それじゃあ、よろしくね、ライム」

「キュー!」


 しかし、傍から見れば、左肩に黒猫、右肩にスライムという珍妙な恰好だ。

 ぶっちゃけ首を回しづらいし、結構動きにくい。


「しかし、こうも肩に乗ってしまうとおぬしの邪魔になってしまうな。カイト、頭に乗っても構わないか?」

「頭? え? どうやって?」

「まあ、見てろ」


 そう言うやいなや、肩から高く跳んだシフは、そのまま不定形の黒い塊へと変わる。

 そのまま空中で変形し、僕の手の上に乗った彼の姿は——、


「帽子?」

「うむ、これならおぬしの動きを邪魔することはないし、声も届かせることが可能だろう」


 見た目は西部劇で見るような黒い帽子。

 まるで本物のように軽いし、見た目もかっこいい。

 恐る恐る被ってみると、帽子は頭に吸い付くように固定される。


「どうだ?」

「大丈夫、ぴったりだよ」


 シフの声が耳元で聞こえてくる。

 うるさくもなく、よく聞き取れるくらいの丁度いい声だ。


「その服とは不釣り合いだな。人間の街に向かったら丁度いい服を見繕ってもらおう」

「はは、そうだね」

「キュっ!」


 たしかに高校のブレザーとは合わない。

 人間の街、というフレーズが出たことに気になったけれど、まずはこれからどうするかシフに聞かないとな。


「この次は?」

「予定としては、もう一人の魔物を仲間にすることができた。あとはお主に力の扱い方を理解してもらい、ライムに使い魔としての役割を――」


 そこまで口にしたシフが黙る。

 どうしたのか? そう訊こうとしたその時、遺跡の奥から何か大きなナニカが大きな音共に這いずる音が響いてくる。


「……気取られた!? まさか、この距離でカイトの魔力の匂いに引き寄せられたのか!?」

「シフ、この音は……」

「奴が来た! この遺跡で最も強く、邪悪なる者が!」


 次の瞬間、地獄の底から響くような怪物の声が僕達のいる階層の奥から聞こえてくる。

 生物として定義していいか分からないほどの悍ましく、力強い声。


「この階層に逃げ場はない……! カイト、最早、私達に残された選択肢は一つだ!」

「それは!?」

「三つ首の大蛇、オロチ! 奴を超えて地上へ脱出する!」


 絶体絶命という状況の中、震えあがりそうな暗闇の中。

 僕は常識の外に君臨する怪物との遭遇が決定づけられた。


ゴリゴリの近接戦闘に目覚めていく主人公。


次回の更新は明日の16時を予定しております。

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