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第二十三話

第二十三話です。


 宣言通り、リーファは大荷物を抱えて僕のお世話になっている宿にやってきた。

 突然の宿泊者にメルクさんは、困惑しながらも許可してくれたが、一方のリーファはメルクさんが口にした宿の宿泊費の安さに、声を上げるほどに驚いていた。

 メルクさんは「もう宿泊費じゃなくて、家賃として巻き上げるべきか」と思い悩んでいたが、それは聞かないでおいた。

 冒険者になったとはいえ、装備とか食費とか諸々で仕事しないときつい。


「よりにもよって、隣の部屋かい……」

「隣の方が、私も落ち着ける」


 僕はアロマか何かかよ。

 部屋は自由に選んでいいとメルクさんは言っていたけど、まさか僕の部屋を知るなり真っすぐに隣の部屋を開き、荷物を放り込むとは思わなかった。


「この宿は安い、ご飯が美味しい。それに隣なら打ち合わせも、相談もできる。完璧」

「たしかに隙が無いな。おぬし、存外に合理的だな」

「ふふん、でしょう?」


 シフが変な方向で納得しちゃってるよ……。

 いま居るのは、お馴染みの食堂。荷物を運び終えたリーファは、メルクさんが作ってくれた紅茶を口にしている。


「カイト、ライラは?」

「ああ、彼女は今日の朝に魔物討伐の依頼に行ってくるって」

「彼女はかなりの実力がありそうだからな。受ける依頼も、私達よりも難易度の高いものなんだろう」

「たしか、ランク・シルバーだって話だよね」


 そういえば、冒険者にはランクというもので序列分けがされているんだよな。

 序列はブロンズ・シルバー・ゴールド・ブラックに分けられており、僕とリーファのような駆け出しの冒険者や、危険な依頼を受けることのない人が『ランク・ブロンズ』。

 凶暴な魔物への対処や、要人の護衛依頼などをギルドから要請されるのが『ランク・シルバー』

 その上のさらに危険な魔物、王族や重要な人物に関わる依頼に関わることになるのが『ランク・ゴールド』

 ゴールドの上、最高位に位置するのが『ランク・ブラック』というらしいのだけど、大陸全土でもその序列にいるものは少なく、おまけに名前も公表されていないので、そういうランクがあるだけと認識されているらしい。


「リーファは上のランクに上がりたいのか?」

「うん。上がればそれだけ強い魔物と戦えるからね。でも、シルバーにはすぐに上がれるって聞いてる」

「そうなの?」

「というより、シルバーとブロンズは、厳密には同じランクらしい。上を目指す必要のない人は、ブロンズで安全に依頼をこなして、お金を稼いで上を目指したい人はシルバーに上がるらしいんだ」


 それじゃあ、シルバーに入れるだけの実力が認められれば、なれるってことか。


「とりあえず、今は依頼をこなしていかなきゃな」

「そうだね。まずはそれからだと思う」


 目標ができたところで、僕も手元のカップを口に運ぶ。

 異世界でお茶というものがあることに驚いたけど、その味は微妙に違っているから面白い。

 いや、元の世界でもそれほど飲んではいなかったけれども。


「そういえば私、カイトが何ができるのか知らない」

「……あ、僕も説明してなかったな」


 お互い冒険者になって浮かれていたのか、単純に忘れていたのかは分からないけれど、今更こんなことに気付くなんておかしな話だと思った。

 もう一度、一緒に依頼をしてしまったのに。


「僕も君の魔法のことはよく知らなかったし、今がいい機会だからお互い説明しちゃうか」

「では、宿の裏庭で試してみるといい。ここでやるとメルク殿に怒られそうだからな」


 シフの提案に頷き、席を立った僕とリーファは宿の裏庭へと移動する。

 裏庭はそれほど広くはないが、一人で練習するには丁度いいスペースがあるので、自己練習するにはもってこいの場所だ。

 そこに移動した僕は、まずはライムに棍棒に変身してもらうようにお願いする。


「まずは僕から説明するよ。多分知っていると思うけれど、僕の戦いはシフとライム、使い魔に力を借りて戦うんだ」

「私の支援魔術、ライムの変形でサポートし、カイト自身が強化された体で戦うのが基本だ」

「やっぱり普通のテイマーとは違うね。シフの支援魔術は何ができるの?」


 帽子へと変身し、僕の頭に移動したシフはリーファの質問に答える。


「肉体強化、火炎付与、電撃付与の三つだな」

「私にもできる?」

「可能だが、カイトほどの効力は出ないだろうし、強化できる対象は一つの支援魔術につき、一つだけだ」

「カイトほどじゃないって、どういうこと?」

「ふむ、少しばかり憶測が入るが、これにはカイトの系統――純魔の魔力が関係している。私の支援魔術を介して魔力が還元され、彼へと干渉すると、彼自身の魔力と反応を起こし、支援魔術の効力を倍以上にまで引き上げてしまうのだ」

「……?」

「つまり、カイトの魔力は、彼の魔力を使う私を介した支援魔術と相性が良すぎるということだ」

「……なるほど。分かる。そういうことね、うん」


 あ、これは絶対分かってないな。

 他ならぬ僕も半分くらいしか理解していないからしょうがないけども。


「そして、ライムは僕の魔力を吸うことでその体を素早く変化させることができるんだ」

「キュ!」


 僕の魔力を吸ったライムが、長剣へと姿を変える。


「リックさんと戦った時みたいに、生き物みたいに動いて相手に襲い掛からせることもできるし、ロープみたいに伸びることもできる」

「加えて、ライムに火炎と雷撃を付与することで、攻撃力を上げることも可能だ」


 そして、シフが長剣に火炎を纏わせる。

 ごうごうと燃える剣から火の粉が飛び、空気を通して熱が伝わってくる。

 現状での僕の能力がこんな感じだけれど、それを確認したリーファは顎に指を当てながら、微妙な表情を浮かべた。


「なんというか、カイトって私達の知るテイマーとは全然違う。普通のテイマーって、使い魔を戦わせて指示を出すような感じだから、カイトはなんか変」

「変って……」


 言い方よ。

 一般的なテイマーから逸脱してる自覚はあるが。


「次は私の魔法を教えるね」

「ああ」

「私の系統は影。影を媒介にして色々できる……って話らしい」


 なんだか曖昧な言い方だな。

 シフも疑問に思ったのか、帽子から黒猫に戻りながら首を傾げた。


「おぬし自身にも分からないのか?」

「魔法は最近練習するようになったから、目視した影への移動と、自分の影を操ることしかできない」


 そう言って、リーファは裏庭に植えてある樹の影へと視線を向ける。

 彼女の足元の影が揺らめくと同時に、水面に落ちるように体が影へと吸い込まれた。

 次の瞬間には、樹の木陰から姿を現した。


「こんな感じ。もっと色々なことができるはずだけど、今は無理」

「影を介した短距離転移か。突っ込んで攻撃するカイトとは違って、搦め手に使えるな」

「その言い方だと僕がまるで脳筋に聞こえるんだけど」


 あれ、目を逸らされた?


「と、とりあえず、カイトもリーファも互いに使える魔法が分かったな」

「これで連携とか取りやすくなるね」


 そして露骨に話を逸らされた。

 なんだろう、僕はもっと考えて戦うべきなのかな?

 チラチラと僕を見るシフにそんなことを考えていると、ふとどこからか視線のようなものを感じる。

 これは、小動物の視線……!


「む?」


 感じた方にバッと勢いよく体を向けると、裏庭の入り口あたりから白い犬がこちらを覗き見ていることに気付く。

 いや、犬かあれ? 柴犬……? にしては顔が鋭い気がする。


『ッ!?』

「あっ」


 僕と視線があった白い犬? はびくりと驚きながら、頭を引っ込めてその場から逃げ出してしまった。

 怖がられて逃げられるという、元居た世界で慣れ親しんだ感覚。

 久しく忘れていた経験に、思わず笑いがこみ上げてくる。


「ク、フ、フハハハ……」

「カ、カイト、どうしたのだ突然!?」

「わ、笑いながら、泣いてる……!?」


 やっぱり僕の動物に嫌われる体質は、この世界でも健在なようだ。

 異世界なら犬と戯れるかもしれないと心を躍らせていたのに、この仕打ちよ。


「決めた。次は犬の魔物を使い魔にする」

「その決断に至る経緯が全く分からんぞ!?」


 そう心に固く誓いながら、僕はいつかこの世界で犬と触れあうその日を夢見るのであった。

本作のメインヒロインはリーファとなります。

なぜか感想欄で、ハンマー扱いされてますけども(白目)


次回の更新は本日16時を予定しております。

次は、閑話となります。

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