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05話

スズが施設に入れなくなった事件について調査するため私たち3人はパン屋さんになることになった。なぜパン屋さんに…?


「アオイちゃん…明日さくらえびさんに会うところまでは分かったのですがどうしてパン屋さんになるんですか?」

「そうねー…。二人ともワーキングチャレンジャーシリーズって知ってる?」

「確か色々な職業の施設でお仕事体験ができる…そんな感じだったっけ?」


『ホノカの言う通りワーキングチャレンジャーシリーズは様々な職業が体験できる施設のシリーズです。現在約50種類の職業体験施設が展開されており、一番人気が今回みなさんが挑戦する「ベーカリー編」です』


「流石ヘルだね!さくらえびさんは今『ワーキングチャレンジャー(ベーカリー編)』に挑戦中らしいの。だから明日この施設の前で待ち合わせしてお話を聞かせてもらう約束なんだけど、調査の一環としておてんばガールズ探偵団でこの施設を実体験してみようと思ってね」

「要はアオイがパン屋さんになってみたいってことね…」

「ばれちゃったか!」

「『ばれちゃった!』じゃないわよ!もう…素直にやってみたいって言えばいいのに」

「そうですね。でも私もパン屋さんになってみたいです!」

「スズもこう言ってるし…ね?いいでしょホノカ~!」


目をキラキラさせながらアオイがじわじわ迫ってくる…近い、近いよ…。当の本人であるスズもニコニコしているし…やるしかないかな…?


「わ…分かった分かった。パン屋さんになるよ」

「やったー!ありがとホノカ!」

「うふふ。ホノカちゃんがやってくれるって言ってくれてうれしいです!」


と言いつつも私にとってパン屋さんは憧れの仕事!もしかすると二人より楽しみかもしれない…


「そろそろ帰ろっか。結構日も沈んできたし」

「そうですね。あまり遅くなると明日起きれなくなっちゃいます!」

「確かにうちにはお寝坊さんが一人いるし、あぁーあ明日もお寝坊さんが今日みたいに早起きしてくれればいいけどな~」

「まだ朝の事からかうの!」

「あははは…ごめんごめん。じゃあ2人ともまた明日ね」

「はい!また明日です」

「じゃあねー」



私は二人と別れ夕暮れ空の下をホームに向かって歩き出した。さっきまでみんなと一緒にいて、いっぱいしゃべって、笑っていたのが嘘みたいに静かで寂しい。なんだか今朝の夢みたいだ…


『どうしたんですかホノカ、そんなに暗い顔をして。さっきまでとても楽しそうにしていたじゃないですか』


「そうだね…なんだか今朝の夢を思い出しちゃって…」


『今朝の夢ですか…。今朝夢をネット検索した時私が夢とは不思議で理解しがたいものだと評価したのを覚えていますか?』


「確かにそんなこと言っていたような…」


『私がなぜあんな評価をしたのかというとネットに「夢は起きたら覚めてしまうもの」とあったからです。不思議ですよね、さっきまで見ていた物,人,世界が一瞬の内に全く別の世界に変わってしまうんですから。こっちの世界に戻ってきて夢の中で何をして何を考えていたかなんてきれいさっぱりとまではいかなくても、思い出そうと思ってもモヤモヤっとして頭にあるだけで思い出せなくなってしまうのですから』


確かに今までもたくさん夢は見てきた…気がする…。でもはっきりと思い出せるものはない。どんなに楽しい夢でもきれいさっぱり忘れてしまっている。なのにどうして今朝のあの夢ははっきりと思い出せるのだろう…


「ねぇヘル。どうして…どうして今朝の夢だけ、他の楽しい夢は忘れちゃうのにどうして今朝の怖い夢だけは覚えているの?私おかしいのかな…」


『私は夢を見ることができません。だから夢を見たことがありません。だから今ホノカが悩んでることに正解を教えてあげることは残念ですができません…。でもただ一つ言えること、私でもアドバイスしてあげられることは、今朝のホノカの夢は何か大切な何かを暗示しているかもしれないという事です。もちろん私の個人的な見解ですから正しいとは限りません。でも私はそんな風に思いますよ』


「ヘルは…ヘルはどこにも行かない?私を…私を一人にしたりしない?」


あれ…どうして泣いちゃってるんだろう…。別に悲しいわけじゃないのに…。私は流れる涙をどうしても止めることができなかった。


『ホノカ…泣かないでください。大丈夫です。大丈夫ですよ…私はいつまでも、いつでもホノカの傍にいますよ。だから大丈夫です。絶対にホノカを一人にはしませんから』


「あ…ありがとう…ヘル…」


私は気づいたらホームについていて、いつの間にか涙が止まっていて、いつの間にか寝てしまっていた…。


『ふふふ…。ホノカはやっぱり可愛く寝ますね…とってもかわいい寝顔です。私はあなた達とは住む世界が違う。だからあなたたちが普通にできることが、感じることが私にはできない。だからあなたの喜びを苦しみをすべて分かってあげることはできない。でも私はあなたの事をいつまでも見守り続けますよ。私が消えるときはあなたがこの世界からいなくなってしまう時ですから…それまでは…ずっと』


優しい夜風がカーテンをたなびかせている。可愛い寝顔と優しい子守歌だけがただ静かな夜にあった。




『明日は6:00にアラームをセットします。明日の予定は一件ワーキングチャレンジャー(ベーカリー編)にてパン屋さん体験です。

 今日の出来事を日記に記録しますか?

  はい <

  いいえ

おやすみなさいホノカ。いい夢がみれますように…』


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