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次のイベントは?

テスト後とはいえ、ゆっくりもしていられないのが生徒会らしい。

次のイベントは梅雨時期に行われる雨の舞踏会だ。正式なデビュタントはまだ先という生徒が大半だけど予行演習のためにイベントは舞踏会が多くなりがちなんだとか。

今日からその舞踏会に向けた会議が始まるので生徒会館に向かっている。

方向が同じなのか前を歩いていた同じクラスの生徒が生徒会館へ繋がる道を何気なく見た後に『うわっ』と声を上げた。



「どうし・・・うわ」


「驚いた・・・。あ、そうか今日から生徒会は会議だって言ってた」


「なるほど・・・王子待ちか姫待ちか・・・」


「でもセージ王子はもう先に行ってたみたいだし」


「姫待ちか」



そこまで言って私の方をくるっと向いてきたのは伯爵家次期当主の男の子たちだ。このふたりは明るくて立場が高いからといって変に遠慮したりしないのでありがたい。



「どうしました?」


「姫!がんばってください!」


「はい?」


「女の子にモテて羨ましいです姫!」


「婚約者がいるのにダメですよそんなこと言ったら。相手が傷つきます」


「その婚約者、今そこで入待ちしてます」



あっけらかんと言うことだろうか。顔に出てたのか婚約者がいる方の男の子がケタケタと笑った。



「いいんですよ。アイツがキャーキャー言ってるの姫ですし。男で1番好きなのは俺らしいので!」


「婚約者かー。俺はイマイチ相手が決まらなくてさー。そうだ姫ーホワイトリリーと交流を深めるイベントとか考えてくださいよー」


「私の一存では・・・。投稿箱に入れてみればよろしいのではないですか?他校間での交流を増やしたいとか、それらしいことを書けば無下にはされないと思います」



生徒会館の外には投稿箱というものがあり、イベントの感想や要望を入れられるようになっている。その中で良いと思われればイベントとして開催されることもあるのでそんなに出会いを渇望しているならそちらに入れてみるのが1番良いかもしれない。まあ、ホワイトリリーの女の子は婚約者がいることもあるので出会えるかは未知数だけど。



「え、姫天才ですか?」


「秀才であることは否定しません」


「否定しないんだ」



ふたりはそのあと3言ほど話し、婚約者がいない子は要望書が議題に上がったら是非とも推して欲しいと念押しして去っていった。これから部活なんだとか。クラスメイトとも少しずつ話せるようになってきて少し安心している。ただし姫呼びは解せない。そんなにお姫様っぽいかな私。



そのまま道を曲がると確かに女の子たちが立っていた。テスト終わりからこんな風に女の子が待ってることはあった。でもさすがにこんなにたくさんの子が居たことはない。昨日までは図書館に行くか寮に直接帰るかしかなかったから行動が読めなかったのも原因なのかもしれないし、全員が私目当てなんてことはないだろう。そう思って足を踏み出した瞬間黄色い声が上がった。



「スカーレット様~」


「お可愛らしい・・・」



さすがに圧力がすごい。私が歩く度に皆がキャーキャー言ってくるのは逆に怖い・・・。でもフェイバー家の跡継ぎ候補がおどおど逃げるように歩くわけにもいかない・・・。こうなったら、私はアイドルだと思って歩く方が精神的に楽なんじゃないか?思いきりが大切なことも時にはある。



「ごきげんよう皆さん」



そう言って手を振りながら生徒会館までの道を自然な早さで歩いていくと歓声が悲鳴に変わっていった。




扉を潜って階段を登り、部屋に入るとセージ王子が信じられないものを見る顔で私を見てきた。



「・・・違うんです!こうじゃない!私の目標はこれじゃないんです!!」


「友達増やしたいとか言ってるのにアレは無いでしょ」



『信者だよ増えたの』と言われてソファに座り込む。



「だって生まれてこの方出来た友達3人ですよ!それにあんなにキャーキャー言われたこともないんです!うう・・・」


「私たちは友達に入れてくれないのスカーレットちゃん・・・」


「悲しいなあ・・・」


「ジェイムズ様とヴィクトリア様は友達というより先輩な感じが強いですね」



私の両端に座る顔の綺麗な双子にハグされてももう動揺しない。動揺しないぞ。それにしても二人ともいい匂いですね。



「スカーレットちゃんが可愛いってことは私だけが知っていればよかったのに・・・。今からでも遅くないから仕舞ってしまいましょう」



ヴィクトリア様の相変わらず豊かな胸に埋められて身動きが取れない。暴れると他の男子生徒が喜ぶようなので大人しくされるがままだ。



「それにしても会長遅いなあ。アイツ、ナニしてるんだろー」


「誰が遅いって?」


「うわあっ!」



会長の声が聞こえたので離れようとヴィクトリア様の腕を叩くと苦しいと勘違いしたヴィクトリア様はバックハグに切り替えた。いや、そういうことではない。



「遅くなってごめんね。ジェイムズ、君が皆をまとめておかなくてどうするの?なんなら僕が来る前に決めておくくらいの心持ちじゃないとダメだよ」



黒い癖のある髪を揺らして首をかしげる会長は目元のホクロが非常にセクシーな男性でジェイムズ様と仲がいい。



「適当に決めると怒るくせに。それで?遅くなった原因はなんなの?」



ヴィクトリア様に離してもらって席に着く。全員が席についたのを見計らって会長が口を開く。



「遅くなったのは告白されてたから。春先は一時的に増えるんだよね。僕のことは良いとして雨の舞踏会だけど今年のコンセプトはどうしようか?」


前年度までのコンセプトを見てみるとコンセプトは時期的なものなのか雨にちなんだものが多い。感想も添えられているけれど大体毎年書かれてる残念な点が改善されていないようだ。



「・・・去年までの感想を拝見しましたが舞踏会は同性同士で交流するのが難しくなるので生徒間の仲が深まっているのか疑問だという声が多いですね」


「婚約者がいると相手にかかりきりになってしまうという側面もありますし」


「そうですね・・・いっそ顔が分からなければいいとか?」


「ベールでも被るとか?」


「男のベール姿なんて誰が見たいの?」


「・・・仮面、とかどうでしょう?」



仮面なら男女関係なくつけられるしいいんじゃないだろうか。



「仮面、つまり仮面舞踏会ですね!巷で話題の!」


「巷で話題・・・?」


「学校でやらない限り僕たちが仮面舞踏会に出ることなんてないですから!」


「実は密かに憧れてる生徒もいるんですよ!」



確かに結構厳しいですからねこの国。例えホスト側の子どもでもデビュタント前はこっそりでも参加させてもらえないし、学校の舞踏会で仮面舞踏会は行われることがあまりないらしい。



「ただ、瞳の色や髪の色で誰か分かるんじゃないか?」


「それもだが、仮面舞踏会は顔が隠れてる分許可が降りにくい」


「生徒間の交流を目的とするならある程度隠しつつも誰かは分かった方がいいと思います!」


「そうです!それにまだ学年度が始まって比較的すぐですし重大なイベントではないから先生達も仮面舞踏会で許可を出してくれるかも!!」



デビュタントがまだまだ先の1年生たちがものすごい推している。それと同時に私に援護射撃を頼むような顔つきをしている。顔が分からないことを逆手に何かするような学生もいないだろうけど用心したいということで許可が出ないんだろう。それなら先生方を巻き込んでしまえばいい。



「入場箇所を絞ってしまうのはどうでしょう?」


「うん?」


「入場手前までは仮面なしで先生方にチェックしていただいて、入場する直前に仮面を着けるようにするんです。事前に仮面の形状を申請してもらってそのリストを先生に預かっていただいておけばどの仮面が誰か分かりますし、会場内に先生方も混じって参加していただくような形にすれば問題が起きたときもすぐに対処していただけるかと。その代わり集合時間が早まるのと時間がかかるのがネックですが2列ずつ並んでそれぞれ確認していただければ時間は短くできると思います」



参加する先生は教師陣に決めてもらえばいい。こっちで指定すると先生たちとの間に角が立つかもしれないし、この案が嫌なら先生たちは許可しないだろう。そしたら別の案を考えないといけないけど。



「入場口の具体的な数は?」


「男女1つずつでいいのではないでしょうか?会場までは寮から校舎内を通って行くのは例年通りですし、混雑を回避するためにクラスごとに時間を指定してしまうとか」


「・・・まあ、学校だから時間指定でも文句は出ないか」


「会長、先輩、お願いします!やってみたいです仮面舞踏会!」


「うちの姫もこう言ってますし!」



1年生の間で私を姫って呼ぶの流行ってるの?断固として拒否したい。



「姫はともかく、1度提案してみていただけないでしょうか」


「まあ、折角1年生がやる気になってるし・・・」


「そうねえ・・・言うだけ言ってみるのもいいかも。私だって実は仮面舞踏会行ってみたいし」



分かると頷く先輩方多数。そんなに楽しいものなの仮面舞踏会って。



「・・・分かった。もう少しつめてから先生に提案してみよう」



その後、白熱の議論の末完成した計画案は先生達に少しだけ改訂されたものの無事承認された。さて、ここからまた1ヶ月忙しくなる。




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