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ケーキと騎士

夕食の後、叔父様の部屋で噂のケーキを食べている。おじい様たちは一足先に部屋に帰ってしまったしケビンもやることがあると言って部屋に戻ってしまった。ケビンもなんだかんだと忙しいらしい。


それにしても叔父様と話しているととても楽だ。精神年齢は近いのが理由なのかもしれない。2つ目のケーキに口をつけながらそんなことを思っていると叔父様が嬉しそうに私の頭を撫でてきた。



「美味しいですか?」


「はい!とっても!」



今でも甘いものは1日1つまでと言われている私ですが今日は特別だと叔父様から許可が出たので2つも食べられて幸せだ。さすが噂になっているパティスリーだけ美味しい。これでもう少し甘味が控えめだと果物とのバランスが取れてもっと美味しいのに。



「あ、スカーレット、クリームがついてますよ」


「えっ!?」


「ああ、動かないで。はい、取れました」



叔父様は慌てて口に伸ばそうとした私の手をやんわり押さえると空いてる方の人差し指でクリームを拭い取ったかと思うとペロリとそれを舐める。それだけの動作なのに非常に色気がある。



「・・・どうして叔父様が結婚していないのか疑問です」


「そういうデリケートな話は他所では厳禁ですよ」


「そんなことしません。相手が叔父様だから聞けるんです」


「・・・ふふ、スカーレットは相手を喜ばせるのが上手ですね?」


「また、はぐらかそうとしてますね」


「そんなことありませんよ。私にも好きな相手くらいいます」


「!!どんな方なんですか!?」



こんな美形な叔父様が好きになるくらいの人がどんな人なのかとっても気になる。本編に出てこない人だと協力しやすくていいのだけど!



「そうですねえ・・・。年下で」


「はい」


「髪は金色」


「はい」


「瞳が青くて 」


「・・・はい?」


「口の回りにクリームをつけちゃうような可愛らしい子で」


「・・・・・・はい」


「今、私の目の前にいます」


「私のことはいいんですよー!!またそうやってはぐらかして!」



私はきっと叔父様に遊ばれてるんだと思う。何を聞いてもはぐらかされてばかりいる。



「ふふ、本当ですよ?」


「叔父様のそれはもういいですから!」


「スカーレットは可愛いですねえ」


「怒ってるんですからね!」



暖簾に腕押しとはこのことか。ため息をついてから紅茶を飲んで残っているケーキに口をつける。私の様子を楽しそうに眺めている叔父様は知識があってもどうしようもない。まあ、そもそも叔父様は攻略キャラクターじゃないから、どうする必要もないのだけど。やられっぱなしは悔しいのだ。



「やり返そうと思うのは賢明じゃありませんよ?」


「・・・一体何のことでしょう?」


「ふふ、ポーカーフェイスが上手くなりましたね?」


「ポーカーフェイスだなんて・・・叔父様には負けます」



叔父様はカマをかけてるなんて言うけれど心の中を読んでるんじゃないかってくらい的確にこちらの思考を読んでくる。それに素直に反応すると叔父様の思い通りなので気をつけないとまたからかわれるだけだ。



「スカーレットは最近私にからかわれるの嫌なんですね」


「叔父様は子ども扱いするからです。私だってもう小さい子じゃないんですから」


「おや、それじゃあ本気で口説かないとダメですね」


「こほんっ」



叔父様がまた甘い言葉を囁いて来そうになったところで今まで部屋の中で気配を消して静かにしていたブライアンが咳払いをした。



「お嬢様、そろそろお休みの時間ですよ」


「うう、ブライアン、少しくらいいいでしょう?」


「ケーキをふたつ食べたではありませんか。特別は1日にたくさんあると特別じゃなくなってしまいますよ」


「・・・分かりました。叔父様、そういうわけなので部屋に戻ります。ケーキご馳走さまでした。とても美味しかったです」


「ふふ、スカーレットも疲れているでしょうしブライアンの言うことも最もです。それではおやすみなさい」



そう言うと叔父様が私の額に唇を落とすと優しく頭を撫でた。



「それではマイレディよい夢を。この続きは夢の中で」


「・・・はい。おやすみなさい」



イケメンにはもう慣れたつもりだったのに叔父様は別格だ。思わずフリーズした私をブライアンが不自然でない程度に叔父様の部屋から連れ出す。少し離れたところで深くため息を吐いた。




「お嬢様は危機感が無さすぎです」


「相手は叔父様ですよ?それより、まだ寝る時間には早いじゃないですか」



部屋を出てブライアンの持っている懐中時計を見せてもらうと寝る準備をする時間にすらなっていない。



「年長者として止める必要を感じたもので」


「もう・・・ブライアンとガーネットは心配性なんですから。でも時間があるならお兄様の様子を見に行ってもいいですか?」


「構いませんが夜分にレディが男の部屋を尋ねるのは良くありませんからドアの外だけですよ」


「はい」



ブライアンとガーネットは小さいときからお兄さんとお姉さんのようなので私もなんだかんだと文句を言うこともあるけれど言うことは間違っていないのでちゃんと従う。これは甘えているみたいなものでふたりとも分かっているから仕方ないなという顔をされるに留まっている。



「ブライアン、着いてきてくださいね」


「言われなくとも。あ、ガーネットには内密に。私だけ命じられたと知ったら怒りますから」


「はい、秘密ですね」



誰もいないからとブライアンは私の頭を2回ほどポンポンと撫でるとその後は騎士として着いてきてくれる。この気負わない感じがありがたい。ふたりが私の騎士を辞めたいと言ったら泣きつこう。それはもうみっともなく。



「そんなことありえませんよ」


「ふぁい!?」


「お嬢様は身内相手だと分かりやすすぎますからお気をつけて」



にっこり笑うブライアンに叔父様と同じものを感じる。ふたりのウマが恐ろしいほど合わないのは同族嫌悪というものなのかもしれない。



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