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暴走してしまうのを止められない

久しぶりになってしまいました・・・。

ワルツが終わったその瞬間にサファイアが私をブライト王子から引き離してセージ王子がブライト王子を半ば無理矢理連れて私たちから離れる。連携の取れた動きに目を見開くしかない。



「セージ王子と踊ってるときに絶対助けようねって話になったの!」


「そうなんですか。ありがとうございます。ふたりは楽しそうだったのに水を指してごめんなさい・・・」



私がこれでは纏まる仲も纏まらないのではないだろうか。するとサファイアはふるふると首を横に降った。



「セージ王子とはスカーレットとケビン様の仲を取り持ち隊が結成されてるから大丈夫!」


「何が大丈夫なんでしょう・・・?」


「これが共通の話題になってお話ができるからいいの!むしろそれ以外でお話なんてできないし・・・」


「もっと趣味の話とかした方がいいと思いますよ」



話題のきっかけになるのは、複雑だけど良しとしよう。でもそれしか話題が無いのは関係性を深める意味でどうなんだろうか。というか、セージ王子は何をやっているんだ。話ができるようになったなら、話題を広げてほしい。



「・・・スカーレットがいっしょなら、がんばる!」



そう言うので今度お礼も兼ねてふたりを家に誘うことにしよう。セージ王子にも頼まれていたしちょうどいいだろう。夏休み頃がいいかもしれない。



「・・・それではこれにてメイ・ホリデーガーデンパーティを終了といたします。皆さん有意義な休暇を過ごしてください」



私が考え事をしている間に会長の挨拶が行われメイ・ホリデーガーデンパーティは無事に終了した。


後片付けは業者と立ち会いの先生たちに任せて生徒会委員は反省会を行う。来年に向けての課題などをいくつか出しあって反省会は終了し各自部屋に戻ることになった。


その道すがらセージ王子から謝罪と今回の件を陛下に報告するという話を聞いて王家としては私とブライト王子をどうこうするつもりは無いようだと少し安心する。確定じゃないのが怖いところではあるけれど。



ため息をぐっと飲み込んで部屋に戻ると『いつでも行けます!』と言わんばかりにガーネットが仕度を整えていた。



「お嬢様お疲れ様でした!色々と!本当に!ブライト王子のこととか特にお疲れ様でした!」


「ガーネットはここで荷物の整頓をしてたのにどうして知ってるんですか?」


「寮中お嬢様とブライト王子のワルツの話題で持ちきりでしたから。生徒会のお勤めがあったのは幸いでしたね」


「・・・そうですか。ねえガーネット」


「なんでしょうか」


「私にそんなつもりはないと、何度言えば耳に入るんでしょうね・・・」



正直なところこれまでに何度もアプローチは来ているのだけどきちんとお断りしている。それにも関わらずまだ続けるのと、学園という公的な場所で断れない状況を作るところにかなりうんざりしている。



「非常にポジティブですからね。と、それどころじゃありません。すぐに出発しないとブライト王子たちと鉢合わせしたらまた面倒ですよ!」



セージ王子が終わるのを待ってから一緒に帰るらしい。セージ王子が突然「僕が時間を稼ぐから!」だのサファイアが「スカーレットは早く帰って!」と言ってたのは私をブライト王子に会わせないようにするためか。友達には恵まれてよかった。最後にスティナーに挨拶だけしようと部屋を訪ねようと部屋を出るとちょうどスティナーも部屋から出てきたところだった。



「スカーレットも出るところなのね?」


「はい。よかったら門のところまで一緒に行きませんか?」


「断ると思って?」


「いいえ」



ふたりで門のところまで歩いていく途中スティナーは私に向き直ると突然ぎゅっと手を握った。



「スティナー?」


「・・・気のせいかもしれないけれど、ケビン様には気を付けなさい」


「?」


「私、ケビン様と踊ったのだけど・・・」


「え!?」


「あなたブライト王子をどうするかで手一杯そうだったもの気がついてないのも無理ないわ」


「うう・・・面目ないです・・・。でも、それとお兄様に気をつけるのと何か関係があるんですか?」


「女の勘よ。お顔は普通だったけれどなんとなく不機嫌そうだったから・・・ケビン様の様子がおかしいのは大体スカーレットが関係しているときでしょう?」


「・・・もう少し隠すように伝えておきます」


「そんなのはどっちでもいいのよ!いい?相手はもう大人の男の人なんだから子どもで女の子の私たちじゃ太刀打ちできないのよ?よくよく気をつけてちょうだい!」



私よりよほどしっかりしている。そんなスティナーの言葉に素直に頷いたのにスティナーはまだ心配そうだ。



「・・・一緒に乗っていこうかしら」


「私がおじ様たちに怒られますからスティナーもちゃんと帰ってください。大丈夫ですよ従者もいますし」


「お父様たちなら絶対怒らないわよ」


「でも、きっと早くスティナーに会いたいはずです」



実際に乗って着いていくことはできないことは分かってる上での発言だがそれだけ心配してくれているのだろう。それにしてもスティナーがケビンに気をつけてなんていうことは今まで無かったので端から見ても様子がおかしいということなんだろうか。



「・・・もう馬車ね」


「スティナー、また学校で。メイ・ホリデー、楽しんでくださいね」


「・・・ええ。また学校で」



言いたいことをかなり飲み込んだ表情をしてスティナーは馬車に乗り込んでいった。私もブライアンが開けてくれた扉から馬車に乗るとケビンがすでに乗っていた。



「おまたせしました」


「僕も今来たばかりだから大丈夫だよ」



私がケビンの向かいに座ったのを確認したブライアンが扉を閉めるとケビンはわざわざ私の隣に座ってきた。こういうときは機嫌があまり良くないことが多い。


馬車が動き始めてすぐ、ケビンは私の手を強く握った。



「ブライト王子とのダンスは楽しかった?」


「・・・え?」


「ずっと笑顔だったでしょ?」


「・・・まさか渋い顔をして踊るわけにもいかないでしょう?」


「・・・分かってる、そんなこと分かってるけど、でも、本当は嬉しかったんじゃないかって勘繰ってしまうんだよ」


「そんなこと、あるわけ・・・」


「ねえ、どうしたら、スカーレットは僕だけのものになるの?」


「・・・はい?」



本当に久しぶりの発作に目を白黒させているとケビンはどんどん私を壁際に追いやっていく。



「・・・スカーレットは色んな人に好かれてる自覚はある?それを見かけるたびに僕がどんな気持ちになってるか分かる?」


「あの、お兄様近いです・・・」


「こんな程度で?僕はスカーレットと少しでも離れてたくないのに」



ケビンの地雷はブライト王子で決定です。しかも、こうなったケビンを私が宥めることは難しい。庇ってると思って余計ひどくなるのはすでに経験済みだ。


さすがに馬車の中で何かしてくるとは考えにくいけれど家に帰ったらなんだかんだと理由をつけてメイ・ホリデー中1歩も外に出させないくらいのことはしかねない。いや、お父様が止めるとは思うけどどうなっても面倒くさいのだ。


馬車の外を馬が駆けていく音だけが車内に響く。私もケビンも黙ったまましばらくが経過した後ふいにケビンがグッと身体を近づけてきた。



「お兄様、だから近いです・・・」


「・・・もう、いっそここで僕のものにしちゃえばいいんじゃないかな」


「な、にを言ってるんですか?」


「そうだ、そうすればスカーレットは跡を継いでも継がなくても僕を選ぶしかないもんね」



誰だ馬車の中だから何もしてこないなんて言ったのは!私だ!なんで唐突にヤンデレルートに突入してるんですか!外に助けを求めようにも、さすがにフェイバー公爵家の血の繋がりのない兄が妹を襲ったなんて知れ渡ったらケビンの立場も悪くなるし家の評判も悪くなる。



「家に着くまではまだ少しあるね。少し静かにしてて?」


「や、めてください!」



これ以上はまずいとケビンを突き飛ばすと彼は少しポカンとしたあと声を押し殺して笑っている。そうかと思うとグッと私の手を押さえて動きを封じた。



「怖いかもしれないけど、スカーレットは魔法使いで僕は怪獣でしょう?ずっと一緒にいるために少しだけ我慢して?ね?」


「お兄様、手が痛いです、離してください!」


「・・・どうして嫌がるの?ブライト王子に何か言われたの?それとも、僕のこと嫌い??そんなことないよね、スカーレットが僕のこと嫌いになるなんて。じゃあやっぱりアイツがいけないんだね。スカーレットの耳を汚したブライト王子は後でなんとかするとして、まずは消毒しないといけないね」



そう言ってケビンが近づいてくる。もうダメだと思ったとき突然馬車が止まったかと思うとケビンが目の前から居なくなり、代わりに叔父様が立っていた。



「お、じさま?」


「そうだよ。スカーレットのお誕生日祝いが出来てないからって母上がメイ・ホリデーの2日目までスカーレットを家に泊まらせてーってフェイバー公爵に文字通り泣きついてね。スカーレットには内緒のまま来てもらったんだけどふたりとも急用が入って出迎えられないから僕が来たんだ」



聞きたかったことをほとんど全て説明してくれた叔父様は私を馬車から下ろしてくれた。降りるとシュプリーム家の騎士に両脇を挟まれて不服そうにしているケビンの姿があった。



「まったく、僕に腕一本で引きずり下ろされるなんて、公爵家の男としてどうなの?」


「成人男性を片手で下ろせるあなたがおかしい」


「ふうん?そういうこと言うんだ?へえ?うっかり姉上に口が滑っちゃいそうだなあ。ねえスカーレット」


「えーっと・・・」



この二人はしばらくケビンがシュプリーム候爵家に居たこともあって仲がいい。馬車の中を見た叔父様が瞬時にケビンを引きずり下ろしたんだろう。他の人は見ていなかったのか騎士たちも『どうしてケビン様を挟むんだろうか?』と言いたげな顔をしている。



「ぐ・・・それは、やめてください」


「まあ、父上に憧れて髪を伸ばしてる可愛らしさに免じて今回だけ・・・と言いたいところだけど言いたいことがあるから顔を貸しなさい」


「・・・はい」


「スカーレットはお部屋に行って着替えておいで。ブライアンとガーネットも護衛ご苦労様。屋敷の中ではゆっくりしていって」


「お心遣いありがとうございます。ですが私たちはお嬢様の盾ですので」


「・・・ふうん。気づいてて言わない辺りはいいのかな?」


「私たちは応援してますから!それにお嬢様が本当に危ないときは助けるつもりでしたよ」


「ギリギリだったよね?」


「恋の駆け引きはギリギリなものです」


「未婚者二人が何を言ってるの?」



それ、盛大なブーメランですよ叔父様。それと、気づいてたのに放置した二人にはじっくり話を聞く必要がありそうだ。





少し体調を崩していましたが、落ち着いたのでまた投稿していけるようにがんばります・・・!

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