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薔薇と視線(2019.5.28少し変更しました)

前の文だと1年生の生徒会役員がスカーレット、サファイア、セージ王子しかいないようにとれる書き方になっていました。もっと人数がいるつもりで書いてますので少し変更しました。

1年生の王家と公爵家の中で生徒会に入ったのは私とサファイア、それにセージ王子だった。公爵家も王家も人数が少ないので特別枠扱いらしい。なんだかちょっと複雑だけど階級制度の面倒なところだと割りきるしかないか。

生徒同士の顔合わせは委員決めの当日に済ませてあったけれど、生徒会担当の先生が当日どうしても来られなかったため、各自で挨拶しに行くことになり、今3人で教員棟に向かっている。先生は1人1部屋与えられているのでたくさんの先生たちの目にさらされないというのは少し気が楽だ。ただ、サファイアは緊張しているようで手を胸の辺りで握りしめている。



「ど、どんな先生なんだろうね」


「噂ではお優しい方らしいですけど」


「伯爵家の次男だったかな?柔和な印象だったよ」



セージ王子はすでに会ったことがあるらしい。ブライト王子を見てきたセージ王子いわく悪い印象はなかったと言うので少し安心だ。セージ王子が代表してドアをノックすると入室の許可が出たので中に入る。シックな部屋には本がところ狭しと並べられている。その中心に座る男性を見て声を失った。そんな私の様子に気づくことなくセージ王子が挨拶をする。



「こんにちは。フィリサティ先生。生徒会員になったご挨拶に参りました」


「はい、聞いていますよ。よろしかったら中へどうぞ」



目の前にいたのはスカーレットの断罪後の結婚相手になっていた伯爵だった。ウェーブがかった茶色の髪にビー玉みたいに光る深緑の瞳。優しげな笑顔にマルーン色の正装を着こなした年上の男性はゲームのスチルで何回も見た姿そのままだった。彼も私の姿を見て一瞬固まるがすぐに何事も無かったかのように椅子を勧めてくれた。


「わざわざ王族や公爵家の方々にお越しいただき恐縮です。生徒会担当のフィリサティ・コンフィデンスと申します。これから1年間、よろしくお願いいたします」



爽やかに笑う彼からはジャスミンの甘い香りがする。そのまま生徒会の仕事についての説明を受けて解散となったが私だけ呼び止められた。



「スカーレット様」


「は、い」


「お父様には大変お世話になっているのでご挨拶をと思いまして。このところお会いできていないのですがフェイバー公爵はお元気ですか?」


「は、はい。この間も馬を走らせていました」


「相変わらずのようですね」



そこから少し話をして今度こそお別れというときに花瓶から花を一輪取り出すと水滴が垂れないようにぬぐって綺麗な紙に軽く巻いたものを渡されて首を傾げる。



「これは?」


「呼び止めてしまったお詫びです。薔薇の花は私よりも女性の方が似合いますから」


「あ、ありがとうございます」


「はい。それではお気を付けて。これからよろしくお願いします」



寮に戻りながら薔薇の花をじっと見つめる。薔薇を1本女性に贈る意味が分からないほど無知ではない。「ひとめぼれ」という意味だ。これはきっと気がついていない体をとったほうがいいだろう。



「・・・なんだか、もっと前途多難になった気がする・・・」



とりあえずケビンに見つからないように図書館の前は避けて歩いた。ヤンデレルートを阻止しようとしてるのにわざわざ刺激することはない。悶々としながら部屋に戻ってもらった薔薇を花瓶に入れる。



「あー・・・ままならないなあ」



今は部屋に私しかいないので机に頬をつけて力を抜く。ヒロインが来る以前にこんなにしっちゃかめっちゃで一体どうしたらいいって言うのか。そう思ってウダウダしていると扉をノックしてガーネットが手紙を片手に部屋に入ってきた。瞬時に姿勢を正して迎えたから、あのだらしない姿は見られていないだろう。



「お嬢様、ケビン様からお手紙です」


「お兄様から?」



お礼を言って受け取るとガーネットは部屋を出ていった。今日は扉の前で護衛してくれているので位置に戻ったのだろう。



「なんだろう?」



封を切って中身を読んでからそれ机の上に放り出すとまた深いため息をつく。内容は『薔薇の花を誰からもらったの?しかも一輪だけなんて』というものだった。一体どこから見ていたんだろう。



「私は別にヤンデレ好きだって思ってたけど、それは画面を通してたからだって深く実感した・・・」



実際にやられると少し怖い。小さいときは彼が出来ることも限られていた。でも、大人になった今は何をどこまでしてくるのかがさっぱり読めない上に彼を取り巻く状況がゲームとも変わってしまったのでなんの予想もできない。



「・・・三つ子の魂百までっていうけど・・・」



私にしか目を向けられないのは本人的にも実は辛いことなんじゃないだろうか。いや、これは私の主観であってケビンの幸せが私を手に入れるっていうことだけなら辛くもなんともないのかもしれないけど・・・。



「歪んでるのを治したいっていうのは私のエゴなんだろうか」



答えは恐らくyesなんだろう。ただ、1年後からどんどんケビンはおかしくなる。その姿を見たくはない。幼少期辛い経験をした彼には本当に幸せに笑って欲しいのにと考えるとまた、幸せについての思考がループする。



「・・・はあ」



とにかくこの手紙に、なんて返事を書くべきか。それが目下1番の問題だ。




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