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歓迎会

先生方の挨拶の後、歓迎会が行われた。ホールでの席は爵位ごとに分けられていて先生も爵位ごとに座って生徒と食事を取る。交流を深めたり年上の人が入ることによって場を引き締めたり問題が起きたときにすぐに止められるようにという措置なんだとケビンが教えてくれた。


ケビンが私の横に収まると他のテーブルからヒソヒソと会話が聞こえてくるがケビンがカッコいいとかブライト王子の方がいいとかセージ王子も綺麗な顔をしてるとかそんな内容なので聞こえていないことにする。



「お兄様、どうして図書館勤務になってるって教えてくれなかったんですか?」



ケビンがこの学園に教師として来るのはゲームのシナリオ通りなのだけど教科が違う。本来なら数学の教師としてやって来るのだ。だからケビンがこの場に現れたことには驚かないけれど図書館勤務なのには驚いている。



「教科担当になってスカーレットがつまらないこと言われても面白くないでしょ?教科担当の方が会える機会は多いけどこれでも考えたんだからね?」



そう言いながら運ばれてきた料理を口に運ぶケビンの横顔を見てポカンと口を開けてしまう。教科担当になれば贔屓してるだのなんだのと言われる可能性は確かにある。譲歩して図書館勤務を選んだということか。



「10歳のときのお兄様からしたら考えられませんね」


「僕もそう思う。本当は学園にも来るべきじゃないかな?とは思ったんだけど我慢できなくて・・・ごめんね」


「そう思うなら今すぐ退職届を出されたらいかがですか?」


「可愛いスカーレットが狼に狙われないか心配してはいけませんか?何せこの子は面倒な男に好かれやすいもので」


「ご自分のことを言ってるんですか?」


「おや、フェイバー家を侮辱するのが相変わらずお好きなようで。当家は王家のお力になれるように心を尽くしているというのに伝わっていないのは悲しいですね」


「ふたりとも、そこまで。それ以上続けるなら退席してからにして」



セージ王子の一言でケビンは頷いてそれ以上続けることはなかった。ブライト王子は何か言いたそうだったけど一瞬顔をしかめた後は普通に食事を摂っていた。これ以上誰もしゃべらないと場のくうきが悪いままだ。学園の話でもしてみようか。



「そういえばサファイアは何組なの?」


「え、あ、えっと・・・」


「このふたりのことなんて気にしなくていいんですよ?サファイアに何か言ったら私がフェイバー家公爵令嬢として怒ってあげます」


「・・・スカーレットのそういうところ怖いと思うの」


「まあ、大切なものを守るために権力を使うのは悪いことじゃないですよ?」


「・・・んと、3組・・・。スカーレットは?」


「私は2組ですよ」


「僕と同じだよねー。ブライトは離れたけど」



ぷぷっと笑うセージ王子を無視してブライト王子は黙々と食事を取っている。ケビンはスティナーに気を使ったのかいつの間にかスティナーが私の隣に来ていた。



「スカーレットは友人が少ないからひとりで大丈夫か不安だわ・・・」


「私とスティナーにはスカーレットも言われたくないと思う」


「公爵家なんて遠目から眺められることがほとんどだからね。僕はスタンとパトリオット様がいたからよかったけど」



爵位が高くなればなるほど人は近寄ってこないものらしい。まあ、気分的には楽だけど逆に言えば味方が少ないということでもある。運ばれてきたデザートを口にしながら友達も出来たら嬉しいなと思う。学生生活のやり直しだ。あまり友達が多くなかったので今度はクラスメイトとの仲も良くしていきたい。



「そろそろ解散ですね」


「そうね。スカーレットたちは私と参りましょう」


「僕が途中まで送るよ。教師棟は中間地点だし。ガーネットやふたりの騎士もいるけど心配だから」


「ケビン様が着いていってくれるなら安心だね。それじゃ、僕たちも戻ろうブライト」


「・・・」


「早くしないと置いてくよ」


「・・・わかった。それじゃあ3人ともお休み」


「おやすみ~。サファイア暖かくして寝てね」


「え!?あ、は、はい!」



サファイアの返事に嬉しそうな顔をするとセージ王子はブライト王子を連れて帰っていった。



「それじゃあ行こっか」


「はい」



歩き出そうとしたところで何人かの女の子たちが前に立ちはだかって来た。確か侯爵家の子達だったはずだ。ケビンに用事だろうか?



「あ、あの、スカーレット様」


「はい」


「そ、その、わ、私たちも一緒に戻ってもよろしいでしょうか・・・?」



なんでも騎士の到着が遅れていて戻るのが怖いということだ。考える間もなく頷く。



「他にもひとりで帰らなくてはいけない方がいたら皆で帰りませんか?その方が怖くないですよ」



私の呟きをどこで聞いたのか皆が私も私もと集まりほとんどの女の子が纏まって帰ることになった。夕食も兼ねていたので空は暗いけれどそれぞれの騎士が持っているランプの明かりで私たちの周辺はとても明るい。



「スカーレット様は首席でご入学されたと全女子の間では話題でしたの」


「まあ、そうなんですか。それならもっと凛々しくしていれば私とてもモテたでしょうね」


「いえ!そのお可愛らしい感じなのに殿方を蹴散らしての首席というのがいいと話題でしたのよ!」


「・・・そうなんですかスティナー」


「そうよ。あ、スカーレット髪に花びらが付いてるわ。風で飛んできたのかしら?ああ、サファイアも!サファイアは髪がふわふわだから入り込んでしまってるじゃない!後で部屋で取ってあげるからいらっしゃい」


「うん・・・」


「・・・スティナー様ってお話ししてみるとお姉様タイプで面倒見がいいんですのね」


「サファイア様もスカーレット様やスティナー様とお話しされているときはふにゃりと笑われたお顔が可愛らしいですね・・・」


「・・・私、どうして殿方ではないのかしら」


「ダメよ!それ以上は戻れなくなりますわ!」


「スカーレット様たちはさすが公爵家の薔薇姫ですわね」


「皆さんもとても可愛いと思うのですけれど?」



口々にそう言ってくれた女の子たちにそう返せば何人かがぐっと胸を押さえながら歩いている姿が目に入る。私こんなに可愛い女の子たちに囲まれたの初めてだ。


何気なく横を見るとケビンも女の子たちに囲まれていた。なんとなく面白くないのは家族を取られたような気がするからなんだろうか。



「・・・スカーレット?難しい顔をしているけれどどうしたの?」


「いえ、なんだかムカムカするというか・・・」



嫉妬なんてらしくない。私はもう成人していたんだし若い女の子がイケメンに群がってるのを見たってなんとも思わなかったはずなのに。ブラコンを拗らせた上に推しキャラだからってこんなにムカムカする必要はないはずだ。首を傾げていると気がついたケビンが近寄ってきた。



「スカーレット、具合が悪いの?」


「あ、いえ大丈夫ですよ」


「・・・スカーレットの大丈夫は当てにならない。そう言って何回も風邪ひいて無理したり怪我してるのに馬術の練習をしようとしたりしてたんだから」



そう言うが早いか私をお姫様抱っこすると颯爽と歩き始める。驚きすぎて固まっているとケビンが余計心配し始めた。



「スカーレットは身体を壊しやすいからね。寮の前まで送るよ」


「だ、大丈夫ですから!その、皆さんも居ますし・・・!」


「いいから。倒れたら危ないし心配だから」



そう言って真剣な顔をするケビンに押しきられて頷く。平気そうな顔をしてるのに聞こえてくるケビンの心臓の音が早くてつられて私までどきどきしてくる。


「し、心配しすぎです・・・!」


「スカーレットは僕の大切な女の子なんだから、心配くらいさせて?」



このケビンお兄様と学園生活を送るのかと思うとこれからどうやって過ごせばいいのか誰か私に教えてほしい。



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