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こんにちはブライト王子

刺繍の入った薄緑のワンピースに濃い緑のボレロを羽織って白いタイツに深緑の靴とオール緑で固めたコーディネートは確かにあまり可愛らしいとは言えないとは思うがいいのだ。ざまぁしてくる予定の王子様に誰が好き好んで可愛くして会わなきゃいけないのか。



「今日は口数が少ないね」


「おうひさま には あいたいですけど おうじさまは しらないひとなので きんちょう します」


「ノリノリで会いたがられても嫌だからいいけどね・・・あ、着いたよ」



お父様のエスコートでこの前通された部屋に入る。すでに王妃様は待っていたけど陛下も王子様もいなかった。



「スカーレットちゃん、こんにちは」


「こんにちは、エミリア様」


「家の鼻た・・・こほんっ。ぐそ・・・違う、違うの・・・」


「エミリアさま?」


「・・・ええっと、ごめんなさいね」


「息子ですか王妃様」


「それです!そう、息子のためにごめんなさいね。先に挨拶しておこうと思って待ってたのよ」


「だいじょうぶです。きょうは エミリアさまに あえるのだけを たのしみにしてきました!」



エミリア様にぎゅーっと抱きしめられたから遠慮なく抱きしめ返す。ふふふ、美人からのハグ嬉しい。とてもいい香りがする。ローズの香りに包まれてうっとりする。もう帰りたい。



「・・・本当に、もっとマシに育ってれば私だって猛プッシュしたのに」


「あげませんよ」


「えへへ、エミリアさま だいすきです」



大人のやり取りなんて聞こえていない私は思ったことを口にする。すると扉から小さな塊が走ってやってくる。アレ・・・おっと失礼。あの人が王子様かな?



「・・・ちっ」


「ちっ?」


「気にしないでちょうだいな」


「ははうえ、その子ですね!?」


「ええ、そうですよ。スカーレット様、第二王子のブライトです。ブライト、フェイバー公爵家のスカーレット様ですよ」


「第二王子のブライトだ!よろしくな!」



王妃様がわざわざ私の家名まで言ったということは正式な挨拶をってことだと思う。『いくら3歳でも貴族ならみんなそれくらい分かってるからスカーレットもキチンと挨拶しなきゃダメなのよ』ってお母様とエレーナお姉様に実はケビンお兄様にも昨日こっそり言われたのに驚きのあまり固まってしまう。ああ、ダメだ。同じ土俵で戦っちゃいけない。私はワンピースの裾を摘まむと上品に膝を曲げる。



「はじめまして。すてきなごあいさつ、ありがたくおもいます。フェイバーこうしゃくけの スカーレット・アルディ・フェイバーと もうします。おめに かかれて こうえい ですわ」


「・・・えっと?」


「・・・これを見ても陛下はまだ教育は必要ないとおっしゃいますか」


「・・・はあ。こんにちは スカーレット嬢」


いつの間にか陛下も来ていたらしい。同じようにスカートを摘まんで膝を曲げる。



「おひさしぶりです へいか。ほんじつは おまねきいただき ありがとうございます」


「ああ、ひさしぶり。こちらこそ来てもらえて嬉しい」


「・・・ちちうえ!ちちうえは はなさないで!」


「・・・はあ。エミリアの言う通り、明日からストリクト伯爵夫人に来てもらおう」



同い年の女の子と比べてあまりの落ち着きのなさに陛下もがっくりしている。普通の3歳からしたら、恐らく、ずいぶん大人しいとは思うけど王子様だからそれじゃいけないのだろう。実際、貴族は3歳にもなればすでに皆、挨拶はできるようになってるのだ。可哀想かもしれないけど将来のためにもここで矯正しないと彼のためにもならないだろう。



「本日は娘共々お招きいただきありがとうございます陛下。娘の言うとおり、第二王子殿下からは素敵な挨拶をいただきまして、もったいないことです」


「分かった、私が悪かったからやめろ」


「スカーレットだっけ?」


「・・・はい」



いきなり馴れ馴れしい。陛下ですら呼び捨てにはしてないのに何様だよ王子様か。



「けっこん しよう!」


「いやです」



反射的に答えてしまった。いや、だってどこに好きになる要素があるの?ゲームではスカーレットの一目惚れってあったけど見た目だけで好きになったんだろう。エミリア様と同じ銀色の髪は肩あたりで切りそろえられて、さらさらと揺れているし陛下と同じ海みたいに深い青の瞳はきらきらと輝いている、お人形染みた見た目は黙ってれば完璧だろう。いや、私が本当の3歳だったら頷いたかもしれない。ただ、私の中身はただの3歳ではない。記憶うんぬん抜きにしてもこのままじゃ苦労するだろうし、このままじゃ王になれる器じゃない。うん、断ろう。大人3人は慌てた様子もないし断っていいんだろう。



「な、なんでだよ!」



訳が分からないと言いたげな第二王子を納得させないといけないのが面倒なところだ。





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